NHK アインシュタインの目
鰻・うなぎ・ウナギ 2000キロを泳ぎきる驚異のパワー
日本のウナギ消費量は世界一、世界の食用ウナギの7割が日本で消費されています・・ウナギには良質の脂肪やビタミン類が豊富に含まれていて疲労回復や夏バテ防止にはもってこいと言われています。
実は、このウナギ自身もスタミナとパワーに満ち溢れた存在なのです・・ウナギは日本から2000キロも離れた所で生まれ、半年近く泳いで日本にやってくるという驚異の遠泳力を持っているのです。
更に産卵のため2000キロ以上も離れた故郷まで何も食べづに泳ぎきる持久力・・ウナギ・・ただ者ではないですね。
今年の7月に日本の研究チームが世界で初めて天然ウナギの卵を見つけて日本に持ち帰ってきました・・大快挙・大発見としてニュースで報道されたのを見た人も多いと思います。
日本から遥か2000キロ南のマリアナ諸島から卵をとってきたのです・・つまり赤ちゃんウナギが直線距離で2000キロを泳ぎ切って日本の川にやってきて、更に産卵に為に2000キロ泳いでマリアナ諸島に戻るというのが今回の大発見でわかったのです。
生後すぐのウナギの赤ちゃん
生後200日のウナギ
ウナギの赤ちゃん2000キロの旅
生後200日のウナギの赤ちゃんは、木の葉のような平べったい形をしヒラヒラと浮かぶように泳ぎます・・でも何故このような形に変わる必要があるのでしょうか?
実はウナギの赤ちゃんは表面積を広げ海流の力を最大限に利用しているのです・・この事が驚異の遠泳力にかかわっていたのです。
ウナギはマリアナ諸島沖の深い海で生まれます・・日本に向かうためには黒潮に乗らなくてはなりません・・しかし生まれた場所には北赤道海流が流れています。
この海流は南に向かう流れが強く、そのままでは南に流されてしまいます・・しかし北赤道海流には貿易風などの影響で海面近くに僅かに北へ向かう流れが出来ています。
この流れを利用する為、ウナギの赤ちゃんは深い場所から浅い海面近くに浮上、体の形を活かしてその流れに乗り、日本へと向かう黒潮へと乗り換えています。
しかし黒潮は秒速2mの早い海流、このままだと一旦日本に近づいてもそのままどんどん流されてしまいます。
そこでウナギは更なる変身を遂げます・・日本に近づく時にシラスウナギに姿を変えるのです・・この細長い形にかわる事で海流の影響を受けなくなり、更に泳ぐ力も付いており、黒潮の流れを離れて日本に近づく事が出来るのです。
産卵の為、2000キロ以上も離れた故郷まで何も食べづに泳ぎきる持久力
ウナギをMRIにかけ構造を調べます・・縦、横、真正面、様々な角度から解析して行きます。
MRIでウナギの断面を見ると身体の周囲に白い部分があります・・皮下脂肪です・・皮下脂肪の他にも骨の部分を除き身体全体が白っぽく写っています・・霜降り肉のように筋肉の中に脂肪が詰まった状態です。
脂肪に覆われた部分は頭のすぐ後ろから尾の先までずっと続いています・・日本で暮らしている間、ウナギは小魚からエビやカニなどの甲殻類まで貪欲に食べ続けます。
これはひとえに身体に十分な脂肪を蓄えるため・・半年間何も食べずに2000キロを泳ぎきれるのは身体いっぱいに蓄えられた脂肪分があるからです。
ウナギの泳ぎにも秘密があります・・実はウナギには普通の魚よりも脊椎の骨が多く備わっています・・マグロが40などに対してウナギは100を超えます。
その分、身体全体をしなやかに動かして最小限の力で省エネの泳ぎが可能なのです・・身体全体を使う事でゆったりとした泳ぎでも最大限の推進力を生みだす事が出来るのです。
■なんか・・ウナギって偉いね・・次に食べるときは、よく考えていただく事にします。