NHK コズミックフロント
発見!驚異の大宇宙「ハッブル宇宙望遠鏡 銀河の謎に挑む」
NASA ゴダード宇宙飛行センター(アメリカ メリーランド州)ここは宇宙空間に飛ぶ人工衛星に指令を送る最前線基地です・・この部屋から指令を送っているのがハッブル宇宙望遠鏡です。
ハッブルはこれまで宇宙の謎を次々と明らかにしてきました・・大気の揺らぎを受けない宇宙では、天体の姿を鮮明にとらえる事が出来ます。
上記は、10万個の星星が集まるオメガ星団(1万7300光年)です・・赤や青一つ一つの星の色までわかります。
上記は、キャッツアイ星雲(3000光年)ベールのように広がっているのは中心で放たれたガスです・・幾層にも重なりあっている様子がくっきりと捉えられています。
上記は、NGC1300銀河、太陽のように輝く星が1000億個も集まった星の大集団、銀河です・・地球からの距離は6900万光年、光のスピードでも6900万年もかかるほど遠く離れた天体です・・ハッブルは、遥か離れた銀河の星粒まで写し出しています。
ハッブル宇宙望遠鏡がこれまで撮影した画像は60万枚に上ります・・その1枚1枚に世界の研究者の情熱と探究心が込められています。
そして今、今世紀最大の謎のひとつ銀河の分布の謎に挑む研究が進んでいます・・1000億個もあると言われる銀河が不思議な模様を織りなしてこの宇宙全体に広がっている事がわかってきました・・その模様とは、泡です。
まるで石鹸の泡と泡の膜に銀河が吸いつくような不思議な模様・・しかも泡の中には銀河はありません・・一体宇宙はどうしてそんな姿になったのか・・ハッブル宇宙望遠鏡が銀河の泡の謎に挑みます。
Front1 ハッブルがひらく宇宙の窓
1990年4月、ハッブル宇宙望遠鏡がスペースシャトルで打ち上げられました・・宇宙に浮かぶ史上最大の望遠鏡、長さ13m、高度600キロの大気圏外を時速2万8000キロで飛行しながら天体を撮影します。
オリオン星雲(1500光年)です・・鮮やかな赤と青のガスが広がっています・・驚異的な解像力を誇るハッブル宇宙望遠鏡だからこそ細部までくっきりと捉える事が出来るのです。
いっかくじゅう座V838(2万光年)まるで花のつぼみのような天体、ハッブルは間隔をあけながら半年にかけてこの天体を撮影しました・・光の広がる様子が鮮明にとらえられました。
SNR 0509-67.5(16万光年)宇宙に浮かぶ巨大なシャボン玉のような天体・・400万年前に爆発した星の残骸です・・透けてしまいそうな淡い幕ですらハッブルはとらえる事が出来ます。
光をとらえるのは宇宙用に開発された直径2.4mの鏡、集められた光は鏡の後ろにあるカメラに届き地上に送られます。
更にハッブルは、90分で地球を一周する猛スピードで飛行しながら空の1点を確実にとらえ続け光を集めて行きます。
ハッブルに指令を送っているNASA ゴダード宇宙飛行センター・・観測する天体もここで決めて行きます・・ハッブル宇宙望遠鏡は観測提案が通れば世界中の誰でも使う事が出来ます。
1年間に届く提案は1000件、その中から選ばれるのは200件、8割が落選します。
宇宙望遠鏡科学研究所 マット・マウンテン所長
「経験豊富な天文学者から怒られる事もあります・・”なぜ私の計画を採用しなかったんだ”・・と、そんな時はこう答えます。残念ながら貴方の提案より、若い研究者の案の方が良かったと・・ハッブルはみんなの望遠鏡です・・多くの人がハッブルを共有できる事を私どもは誇りに思っています」
審査が通るといよいよ観測です・・数時間で終わるものもあれば何十時間もかかる観測もあるのです。
巨大なガスの雲が広がりカリーナ星雲(7500光年)です・・画像の端から端まで50光年あります・・宇宙では人間と同じように星々も生まれ死んでゆきます・・星は宇宙に漂うガスや塵が集まり、その中で誕生すると考えられています。
黒く見えるのは、集まったガスが濃い塊になっているところです・・こうした濃いガスの中で星は生まれて行きます。
これはカリーナ星雲の別の場所です・・ガスが巨大な塔のようにそびえ立っています・・ハッブルは今まさに星が生まれようとする瞬間をとらえました。星は生まれる時、激しくジェットを吐き出します・・そのジェットがガスの塔の先端に見えています。
生まれた星の命は永遠ではありません。ハッブルはこのカリーナ星雲の中で死にゆく星の姿もとらえています・・二つの風船をくっつけたように膨らむガスの中心には、間もなく一生を終える巨大な星があります。
年老いた星がガスや塵を猛烈な勢いで噴き出し最期を迎えようとしている姿です・・巨大な星は壮絶な大爆発とともにその生涯を終えます。
今から1000年前に大爆発を起こして死んだ星の残骸、かに星雲(6500光年)です・・爆発の勢いは凄まじく今でも毎秒1300キロのスピードでガスが広がっています・・やがてガスは、再び集まり次の世代の星を作る材料になります。
ハッブル宇宙望遠鏡は、こうした星たちの生と死の営みを鮮明な画像でとらえる事を成功しました・・もう一つハッブルの鮮明な画像が私たちに教えてくれた事があります。
それは宇宙が星々の集まりである銀河から出来ていると言う事です・・これは私たちの地球がある銀河系です。大きさは10万光年・・端から端まで光の速さでも10万年かかります。
しかし銀河系の外にも銀河が宇宙の遥かかなたにも延々と続いています・・ハッブル宇宙望遠鏡はこうした一つ一つの銀河の独特な姿まで鮮明にとらえています。
こちらは、2100万光年という彼方にある渦巻き銀河(M51銀河)です・・二本の巨大な腕の上に散らばる赤い星雲がくっきり見えます・・私達の銀河系とほぼ同じ大きさです。
更に遠く4600万光年かなたのM104銀河、銀河を横から見た姿です・・渦巻き銀河の特徴である中心部の膨らみと円盤状に広がる腕の部分の薄さが良くわかります。
M82銀河(1200万光年)まるで巨大な雲のように見えますがこれも銀河です・・赤く見えるのは銀河の中心から噴き出された水素ガスです。
こちらは1億光年という途方もない彼方の二つの銀河です・・銀河同士が衝突しています・・二つの銀河は合体し最後は一つの巨大な銀河になると言います。
銀河の衝突の起きているところそこには多くの銀河が密集しています・・いったいなぜ銀河が密集しているところがあるのでしょうか。
その謎をハッブル宇宙望遠鏡史上、最大の観測時間を使って解き明かそうとする研究者がいます・・その話はまた後で・・。