旅cafe

旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。

土星の環 BBC 地球伝説 神秘の太陽系

f:id:tabicafe:20200401080015j:plain

BBC 地球伝説 神秘の太陽系
Wonders of the solar system 土星の環

太陽系は、宇宙空間に漂うガス(水素やヘリウム)とチリ(岩石や氷、有機物)から生まれました・・全ては分子雲(宇宙空間に漂うガスと塵の集まり)と呼ばれる雲から生まれました。

太陽系誕生の秘密を知る手がかりが土星にあります・・土星には地球からも見る事の出来るいくつもの環があります・・この土星が輪を形作った仕組みと太陽系を形作った仕組みが良く似ているのです。


宇宙のリズム
私たちの住む地球は、地軸(地球が自転する際の軸)中心に24時間の周期で自転しています・・更に太陽の回りを1年の周期で公転(天体が他の天体の周囲を周期的に回る事)しています。

地球に季節があるのは地軸が傾いているからです・・地球は規則正しい動きを毎年繰り返しているのです・・規則正しく動いているのは地球だけではありません・・太陽系全体にリズムがあるのです。

たとえば惑星はそれぞれ決まった速さで太陽の回りを回っています・・一番早いのは太陽に最も近い水生、時速20万キロの速さで軌道を描き88日かけて太陽の回りを一周します。

水星の次に太陽に近い金星、その自転速度はとても遅く太陽の回りを一周するより長くかかります・・つまり金星の1日は金星の1年より長いのです。

f:id:tabicafe:20200401080030j:plain

より外側の惑星になると公転速度は遅くなり、木星は太陽の回りを一周するのに地球時間で12年もかかります。

更に太陽から45億キロも離れている海王星(太陽系得惑星の中で太陽から最も遠い位置を公転する惑星)は、1846年に発見されてからまだ太陽の回りを一周もしていません。

太陽系は、このようなリズムで動いているのです・・まるで時計仕掛けのように規則的に・・これほど規則正しいリズムが自然に出来あがったのは驚くべき事です。


宇宙全体を支配する物理の法則
太陽系がどのように出来たかを知るには、まず宇宙全体を支配している物理の法則を知る必要があります・・宇宙を支配する法則は、まったく同じように地球全体を支配しているのです。

物理の法則は、全宇宙共通のもの・・つまり太陽系を作り上げた法則は地球で起きる様々な自然現象にも同様に当てはまるのです。

たとえば排水管へと流れ込む水の動き・・渦を巻きながら流れ落ちる水・・大きな自然現象で言えば竜巻などです。このような動きは宇宙のあらゆる所で見られるのです。

竜巻が発生する仕組みは46億年前に太陽系が作られた仕組みとまったく同じなのです・・太陽系は分子雲と呼ばれるガスとチリで出来た巨大な雲の塊から生まれました。

この分子雲は、広大な宇宙を何百万年もの間、漂い続けていました・・そしてある時、近くの星で爆発が起こり、それが分子雲に衝撃を与え分子雲の中心が収縮し始めた事が太陽系誕生のキッカケとなったのです。

分子雲の密度は次第に高くなり、重力によって多くのガスが集まりました・・間もなく分子雲は崩壊し、回転しながら収縮し始めます。

回転するものは全て収縮する事によって回転の速度が更に速くなります・・それが物理の法則なのです。

重力によって収縮し始めた分子雲は、重力により内側に向かう力と遠心力による外側へ向かう力がやがて釣り合うようになり、中心に太陽、その周りにガスとチリからなる原始太陽系円盤が作られます。

そしてこの円盤から惑星が誕生し太陽の回りを規則正しく回転し始めるのです。

f:id:tabicafe:20200401080022j:plain

太陽系誕生の秘密を知る手がかりが土星にあり
分子雲が重力的に収縮して中心で太陽が生まれ太陽の回りを惑星が公転し始めるまで数100万年がかかりました・・実は、太陽系が出来あがるまでのそうしたプロセスとまったく同じ事が今でも起こっているところが美しく複雑な星、長い間、天文学者達を魅惑してきた土星です。

NASAジェット推進研究所(カルフォルニア)は現在、土星を回っている唯一の探査機カッシーニのコントロールセンターになっています。

カッシーニが打ち上げられたのは1997年、目的は土星とその環の観測です・・2004年以降このカッシーニからは驚くべき画像が送られ続けています。

その画像から土星の輪が非常に複雑な構造をしている事がわかりました・・そして土星を回る衛星もいくつも発見されたのです。

カッシーニの目的の一つは土星の環がどのように出来あがったのかを解明する事です・・何故ならこの美しい土星の環が太陽系を形成する事になった円盤の状態とよく似ていると言う事がわかったからです。

ジェット推進研究所研究員 カール・マリー
「言ってみれば土星とその周りの衛星は、太陽系にミニチュア版みたいなものなんです・・太陽が土星で回る惑星が土星の衛星だと・・土星の環で今も起きている自然現象、そして土星土星の環と衛星との関係は、生まれたばかりの太陽系で起きた事ととてもよく似ているんです」

「ですから太陽系の起源を理解するには、土星の環や衛星の仕組みを解明するのが一番なんです・・カッシーニのおかげで土星の環で現在起きている事を目の前で知る事が出来るんです」

カッシーニからのデータを基により、土星の沢山ある環のそれぞれの細かい構造まできちんとわかっているんです。

土星の環は、全て非常に速い速度で土星の回りを回っています・・土星に近い環ほど回るスピードは速く、最も早いものは時速8万キロ以上、環は一見頑丈そうに見えますが実はとても繊細です。

f:id:tabicafe:20200401080037j:plain

主要な環の直径は10万キロ以上になりますが、厚みはわずか3mしかありません。

土星の環は大きな一つの塊ではありません。それぞれの環は無数の細い環が集まってできており、何10億という氷の塊が集まって出来ています。

それらが土星の重力によって環を構成し、土星の回りを回っているのです・・土星の環が地球から見ても輝いて見えるのは、環は水から出来た氷で構成されているからです。

土星を回っているのが無数の氷、土星の環を構成している氷の大きさは、爪ほどの大きさ、1㎝ほどの小さなものがほとんどです・・しかし中には、直径1キロにもなるものもあるようです。

何10億もの氷が常に動いてぶつかり合ったりしているので、太陽の光を受け輝いているのが土星の環なのです。


土星の衛星、エンケラドゥス
土星の環を理解するカギは、土星の回りを回っている衛星にあります・・中でもエンケラドゥス(1789年に発見)は土星を研究する科学者たちから最も注目をされている衛星です。

土星探査機カッシーニが送ってきたエンケラドゥスの画像に科学者たちは衝撃を受けました・・エンケラドゥスの北半球には無数のクレーターがありますが南半球にはほとんどクレーターはありません・・これは南半球の表面が新しい事を意味しています。

f:id:tabicafe:20200401080046j:plain

表面には谷のようなものが沢山見られます・・表面の氷が削られたものです・・南極には、ひび割れがあります・・長さ130キロに及ぶ4本の平行なひび割れです・・その深さは数100mもあります・・そしてエンケラドゥスの南極が温度が高い事がわかりました。

f:id:tabicafe:20200401080054j:plain

何より、科学者たちを一番驚かせたのは、2005年11月、カッシーニは太陽がエンケラドゥスの向こうに沈んだ瞬間をとらえました(上記画像)・・エンケラドゥスの南極に巨大な噴水があったのです。

噴き出していたのは氷の粒子でした・・つまり、地球ではマグマが噴き出し地表を作りだしますがエンケラドゥスでは、氷の粒子が地表を作っていたのです・・だからエンケラドゥスの南半球にはクレーターが無かったのです。

エンケラドゥス土星の回りを楕円形に回っています・・そのため土星の重力の受け方が変わりエンケラドゥスは変形します。そして内部で摩擦熱が発生して内部の氷を溶かして水を作り、南極から噴出させていたのです。

エンケラドゥスの水は、時速1300キロで何1000キロという高さまで常に噴き上がり続けているのです・・噴き出した水はすぐに氷の結晶となります・・そして地表に落ちてエンケラドゥスの表面を新しく塗り替えるのです。

氷の一部は土星の環になります・・つまりエンケラドゥス土星の環を作りだしていると言う事なのです。


土星木星が起こした『軌道共鳴』
しかし土星の環を作りだしているのはエンケラドゥスだけではありません・・他の惑星も違ったやりかたで土星が美しい環を作る為に重要な役割を果たしているのです。

衛星が土星の回りを回る時、その衛星の重力は土星の環に影響を与えます・・衛星が環に近づくと環のラインが乱れるのです・・土星の環の模様は、こうして衛星の重力によって作られているのです。

こうした衛星の重力はもっと遠くまで影響を及ぼす事があります・・土星の環で最初に目につくのが『カッシーニの間隙』といわれる大きな隙間です。

この隙間は、衛星ミマスにあります。ミマスは環から遠く離れたところを回っています・・そんなに離れた衛星が環を構成する粒子にどうやって影響を及ぼすかと言うと・・。

カッシーニの隙間に存在する粒子とミマスはそれぞれ違ったペースで土星の回りを回っています・・ミマスが1周している間にカッシーニの隙間の粒子は丁度2周するのです。

と言う事は、カッシーニの隙間の粒子は、1周おきにミマスと遭遇する事になります・・二つは1周おきに宇宙の同じ場所で出会うのです・・つまり氷の粒子は必ず1周おきにミマスの重力の影響を受けるのです。

それによりカッシーニの隙間に天体がいても排除されてしまうのです・・こうして環の中に隙間が生まれます・・このような現象を『軌道共鳴』と言います。

軌道共鳴は、ミマスだけでなく土星の環の内側、外側を回っている他の衛星の間でも起きている現象です・・土星の環の美しさは、重力が宇宙の秩序を生みだす事が出来る良い例だと言えるでしょう。

何十億年も前、太陽系の巨大な2つの惑星、土星木星が軌道共鳴を起こし、太陽系の惑星の全ての惑星の軌道が恐ろしく乱れてしまった事があったのです。

38億年前、太陽系全体が大混乱に陥った時期がありました・・木星土星は、元々今よりずっと近い場所で形成されました・・二つの惑星は何億年も軌道を回り続けたあげく、ついに軌道共鳴を起こします。

その結果、重力が強まり、太陽系にある全ての惑星の軌道が乱れてしまったのです・・海王星は外側にはじき出され太陽系を取り巻く彗星の環の中へ投げ込まれました。

1億年もの間、太陽系は無数の彗星が飛び交うまるで射撃場のような場所になってしまったのです・・何100万もの彗星があらゆる方向から飛んできて惑星を攻撃しました。

太陽系の星に見られるクレーターの多くは、この時期に作られたものです・・地球にも多くの彗星が落下しました。

実は地球の海の水は、水分の豊富な彗星が落ちた事によってもたらされたとも考えられているのです・・元々地球は岩だらけの不毛地帯でした。

しかし木星土星の軌道共鳴が起こったおかげで地球に水がもたらされたと言う可能性もあるのです・・水分の豊富な彗星が落ちなかったら地球上に生命は誕生しなかったでしょう。

地球に住む生き物たちは、軌道共鳴によって生まれたと言えるかもしれないのです・・太陽系誕生の裏側には驚くべき宇宙の力がありました。

惑星も衛星も同じ宇宙の法則によって形作られ、今もバランスを保ち存在し続けているのです。

 

www.tabi.cafe

www.tabi.cafe