NHK コズミックフロント ~発見!驚異の大宇宙
太陽系の歩き方 冥王星 そして最果て
21世紀は太陽系大航海時代…人間に代わって20機を超える探査機が太陽系のコズミックフロントを切り開いています。
今回旅するのは、冥王星、そして太陽系の最果てです…月よりも小さい謎の天体・冥王星は数年前に惑星の地位を失いました…冥王星のさらに先の最果てとは…
冥王星データ
1.冥王星の直径は2400キロ、北米大陸の半分ほどの大きさです。
2.ほぼ球形で表面は大量の氷で覆われ、土がある。
3.表面温度は摂氏-240度
4.太陽からの距離は60億キロ、太陽系の他の惑星から比べると冥王星の軌道は細長い楕円形をしています…公転周期は248年です。(地球は1年)
5.冥王星はカロンという衛星を持っています…直径は1200キロ、冥王星の半分もあります…月と地球のような関係ではなく、冥王星の惑星というより二重惑星です。
冥王星は、つい最近まで9番目の惑星だと考えられてきました…子供たちにも大人気…
カルフォルニア工科大学 地質惑星科学科 マイケル・ブラウン教授
「みんな冥王星に愛着があるんです…遠くにあって小さいからでしょう…アニメのキャラクターの名前にもなっているので(PLUTO)みんなのお気に入りなのです」
しかし2006年、この小さな星をめぐって議論が巻き起こりました…冥王星が惑星から外されたのです。
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歩き方…冥王星へ
冥王星探査機ニューホライズンズ、2006年1月19日打上げ…冥王星到達は2015年…一旦、木星をへ…そして木星の巨大な引力を利用して一気に加速、冥王星までノンストップです。
目的地まで9年半、…冥王星は、いま太陽から遠ざかっています…次に近づくのは250年後、我々が生きてるうちに行ける最初で最後のチャンスなのです。
1930年、ローウェル天文台で一人の若いアメリカ人、クライド・トンボーが、海王星より遠い未知の天体を探そうと夜空に望遠鏡を向けていました。
そして写真に記録し、動く星が無いか来る日も来る日も調べる…気が遠くなるような作業です。…そして1930年2月18日、2枚の写真で僅かに動く点を見つけたのです。(上記画像⇒ですが…何が何だかわかりませんよね)
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見どころ…衛星カロン
同じ衛星でも月と地球の関係とは異なるのが冥王星とその惑星カロンです。
冥王星と衛星カロンは、お互い重力のバランスを取りながら回っています…冥王星はカロンの回りを…カロンは冥王星の回りを回っています。
まるで二重惑星です…太陽系では他に例はありません。
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気候…大気を持つ冥王星
冥王星の冬は摂氏-240度以下、窒素とメタンによる大気を持つ冥王星は、窒素の氷で覆われています…夏には凍っていた窒素が溶け、大気を濃くします。
それが太陽風によって宇宙空間に吹き飛ばされます…冥王星が誕生してから現在までに800m分の氷が吹き飛ばされたと考えられます。
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新天地…太陽系の最果て
カルフォルニア大学 デービッド・ジューイット教授
「太陽系の内側には、彗星や小惑星が沢山あります…外側の方に冥王星しかないのは奇妙だと思ったのです」
そして1992年ジューイット教授は大発見をします…太陽系の先に大量の氷の天体を見つけたのです…エッジワース・カイパーベルトです。…太陽系の最果てに無数の氷の天体が帯をなしているのを発見したのです。
カルフォルニア大学 デービッド・ジューイット教授
「直径が100キロを超えるようなものが5万個以上もあります…小さいものなら何億もあるでしょう」
この太陽系の最果てに冥王星より大きな天体を探し求めている科学者がいます。
カルフォルニア工科大学 地質惑星科学科 マイケル・ブラウン教授
「冥王星よりも大きな天体があると考えていました…だからコンピューターによる自動化技術が開発されるとすぐに夜空全体を調べてみました」
ブラウン教授は70年以上も前にクライド・トンボーが冥王星を見つけたのと同じ方法でより大きな天体を探し始めました。…70年前のトンボーと違うのは、望遠鏡の操作、画像の処理、星を見つける作業に至るまで全てコンピューターがするということです。
そして2005年、新天体エリスを見つけたのです…直径2400キロ、冥王星より大きく、太陽からの距離も2倍です。
より大きな天体が見つかり、冥王星の惑星としての地位が揺らぎ始めました…2006年8月、揺らぎ始めた冥王星の地位をめぐって国際天文学連合の総会がプラハで行われました。
総会では惑星の定義が主な議題です…で結果は…
1.太陽のまわりを回っている
2.ほぼ球形
3.自分の軌道に他の天体が無い
この3つの定義を全て満たしたのが惑星だという内容です。
冥王星は惑星の定義の1.2.までは満たしていますが3.の他に仲間がいるかどうかなんです…冥王星の軌道上に同じような天体が多く存在しているので3番目の条件に合わない。
そして国際天文学連合総会で正式に冥王星は、惑星の資格を剥奪されたのです…そして新しい位置づけとして『準惑星』となったのです。
冥王星とエリスの他に3つ天体(マケマケ・ハウメア・ケレス)が準惑星という新しい椅子に収まることとなったのです。
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最果てからの訪問者
彗星は基本的には無害です…しかし稀に地球や他の惑星を脅かす事があります。…エッジワース・カイパーベルトの天体で軌道を外れたものが彗星になります。
地球の近くにエッジワース・カイパーベルトから沢山の彗星がやってくるのです…ごく稀に大きな爪痕を残してゆくものもあります。
6500万年前、恐竜時代に終止符を打ったのは巨大彗星だと考えられています。…衝突するのは数10万年に1回か100万年に1回ですが、いつかまた衝突するのは間違いありません。
地球の水は氷の塊である彗星からもたらされた…それと太陽系の最果てには生命の源である有機物が大量にある事がわかったのです…つまり地球の生物の起源は彗星がもたらした有機物だという事も考えられるようになったのです。
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太陽系をこえて
打ち上げから30年以上、いま2機の探査機が太陽系の境界線を越えようとしています…1977年に打上げられた双子の探査機、ボイジャー1号、2号は、いまも宇宙を旅しています。
太陽から地球までの距離を1とするとボイジャー1号機はその110倍、2号機は90倍も遠くにいます…太陽系の最も外側の場所です。
太陽風が放射状にあらゆる方向に吹き、それが太陽系全体を包み込んでいます…ヘリオスフィアと呼ばれています…一番外側は太陽から140億キロ、ボイジャー1号、2号は、今この辺りを旅しているのです。
ヘリオスフィアの外にも氷の天体が無数に集まったエリアがあります…オールトの雲と呼ばれています…オールトの雲には1兆を超える天体があるのです。
このオールトの雲を超えるとその先は太陽系ではありません。