旅cafe

旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。

太陽系の歩きかた 華麗なるリングの惑星 土星

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NHK COSMIC FRONT コズミックフロント ~発見!驚異の大宇宙~
太陽系の歩きかた 華麗なるリングの惑星 土星

21世紀は太陽系大航海時代…人間に代わって20機を超える探査機が太陽系のコズミックフロントを切り開いています。…今回旅するのは土星です

土星木星の2倍も遠くにあります。太陽から14億キロメートルも離れているというのに常に人々を惹きつけてきました。…土星には太陽系にあるものが全て揃っています。

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土星を探れば太陽系の成り立ちがわかるのです。だからこそ人類は土星を目指しました。1997年10月15日、探査機カッシーニが旅立ちました。土星まで7年に及ぶ長旅の始まりです。…大量の燃料、高性能のカメラ、パラボラアンテナ、小型の着陸機など全てを搭載しています。

土星は太陽系で2番目に大きい惑星(直径12万キロ)でその殆どは水素で出来ています。

NASA ジェット推進研究所 ケビン・ベインズ博士
土星は巨大なガスの塊で外側は気体です。中に行くほど圧力が上がり、温度も上がって来ます。ある深さ以上は液体となります…しかし物理学的にもわかってない事も多いのです」

土星は以外にも軽量級です…体積は地球764個分ありますが重さは地球の95倍、土星の密度は低く水に浮くほどです。

そして土星はガスの惑星なので硬い表面がなく、1日の長さもはっきりしません。ただ雲の最も上は11時間で土星を1周します。

少し離れた衛星から見るとリングは巨大な円盤に見えるでしょう。しかし近づいて見ると細いリングがいくつも集まっている事がわかります。…驚く事にリングは真横から見ると消えてしまいます。

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リングの直径は30万キロ、対して厚みは30メートル…わずか1/1000万の薄さです。…もし土星の直径を東京スカイツリーの高さにすればリングの直径は1.6キロ、この時リングの厚みはハガキ1枚分となります。

 

FRONT1
行き方

NASAカッシーニ計画の最大の危険は、土星への到着時にあります…時速2万キロで土星に向ったカッシーニは、土星の引力を利用して急減速させて周回軌道に乗らなければなりません。

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そこで邪魔になるのがリングです…ここでリングの粒子にぶつかって機体が壊れたらそこでお終いなのです。…チームはリングの粒子の薄い部分に照準を合わせてカッシーニを突入させました。

結果は無事成功です…土星の周回軌道に乗り、映像を地球へ送り始めたのです。


FRONT2
リング

NASA カッシーニ画像チームリーダー キャロリン・ポルコ博士
土星の旅、最大の見どころはリングでしょう…リングは無数の粒子から出来ています。大きさは小石ぐらいのものからアパートほどのものまで様々です。大半の粒子は時速3万~6万キロもの高速で回っています。でもハイウェーで時速100キロで走るのと同じように相対的な速度はゆっくりです…リングに宇宙船で行っても同じ速度で飛べば大丈夫でしょう」

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NASA カッシーニ計画 主任科学者 リンダ・スピルカー博士
ラッシュアワーのハイウェーのようなものです…Bリングは交通量が多いのですが、Aリングに行くとチョットましになり、Cリングに行くとあまり粒子を見かけなくなります。ABCDのリングは違う浜辺のようなものです。それぞれからサンプルを取りたいですね」

リングの粒子は土星の重力の為に平にされて薄い円盤になっています。…端から端は地球から月までもの距離があります。


FRONT3
気候

土星に到着すると表面の雲は一見穏やかに見えてがっかりするかもしれません…しかし、その奥にある本当の姿は荒くれ者です。外から見えているのは上空に浮かぶ霧、アンモニアです。

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土星内部からの熱を赤外線で観測すると本当の土星の姿が明らかになります。

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土星で吹く風は赤道と極地では劇的に異なります。赤道では時速1500キロの猛烈な風が吹き荒れています。…不思議な事に土星の風は木星より強いのです。風の動力源となる太陽光は弱いのに土星の方が強いか出が吹いているのです。

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更に謎なのは太陽から受ける熱よりも土星内部から放出される熱の方が2倍も多い事です。


FRONT4
生命を探して

土星の衛星エンケラドス、大きさわずか500キロのこの衛星はカッシーニが詳しく観測するまでは目立たない存在でした。

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NASA ジェット推進研究所 主任研究者 ボニー・ブラティ博士
「最初に異変に気がついたのは磁力計チームです…磁場が変に歪んでいる事がわかったのです」

NASA カッシーニ計画 主任科学者 リンダ・スピルカー博士
「近寄って恒星の通過を見ると何かがあると気付いたのです」

NASA カッシーニ画像チームリーダー キャロリン・ポルコ博士
「南極から物質が出ているのがわかりました。あまりにドラマチックだったので最初はカメラのノイズかと疑ったぐらいです」

小さな衛星エンケラドスに科学者の注目が集まりました。

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NASA カッシーニ画像チームリーダー キャロリン・ポルコ博士
「白い雪に覆われているように見えます。チョット前に降ったように明るいのです。表面はどこも亀裂だらけです。そして南極を見た時、初めてわかりました。活動の全てはそこで起きていたのです」

巨大な間欠泉が水や氷を宇宙に向けて吹き上げているのです。面積は南カルフォルニアほどもある大きな地熱地帯でした。

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太陽から遠く離れた衛星なのに地熱地帯が存在しています…南極が熱いのです。…土星の強い重力によって南極の地下が変形し摩擦熱により地熱地帯になったのです。

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アリゾナ大学 ロバート・ブラウン教授
「エンケラドスはあまりに小さかったため熱は無いはずです…しかし地下の熱により内部から氷が溶け水となったのです。それが南極の表面まで上がり宇宙空間に吹き上げたのです」

NASA エイムズ研究センター クリストファー・マッケイ博士
「以外にも地球海生命探しの入口はエンケラドスにあったのです…吹いていたのは氷のジェットでした。ここには生命に必要なものが全て揃っている事がカッシーニの観測により確認されています。…エネルギー、水、有機物、窒素、みんなあります。しかもサンプルは宇宙空間に噴き出ていてご自由に御取り下さいと看板が出ています」

NASA カッシーニ画像チームリーダー キャロリン・ポルコ博士
宇宙生物学をするなら太陽系で行くべきところはエンケラドスだと思います。火星、エウロパ、タイタンよりもアクセスのしやすさだけでも有利です。このジェットからそのままサンプルを取れば良いのですから」


衛星タイタン
エンケラドスはカッシーニの観測によって初めて地球外生命の可能性を悟らされた衛星ですが、一方で探査計画の当初から注目されてきた衛星があります。

土星最大の衛星タイタンです…タイタンは水星や冥王星よりも大きく硬い地面があり、濃い大気を持っています。

ジョンズ・ホプキンス大学 ラルフ・ローレンツ博士
「もしタイタンが土星を回っていなかったら惑星と呼ぶ事に何のためらいもないでしょう」

厚いスモッグのかかったタイタン…カッシーニはまず外からこの衛星を観測しました。誕生以来45億年間も太陽光によって窒素とメタンの反応が続くとこんな大気が出来る事は実験で予想されていました。

上空のカッシーニのカメラからでは霧の奥はわずかしか見えません…カッシーニには小型の着陸機ホイヘンスが搭載されています。…2004年12月24日タイタンへの着陸を試みます…惑星探査史上最も遠い天体への着陸です。

ホイヘンスのオペレーションはヨーロッパ宇宙機関(ESA ドイツ ダルムシュタット)で行われます。

ホイヘンスは秒速6キロでタイタンの大気に突入、高さ160キロ、スモッグと霧しか見えません…高さ30キロで表面の地形が見えてきました。

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水路や丘が現れました。それは過去に雨が降った事を示しています。ホイヘンスは更に降下を続け次々と画像を送って来ます。タイタン着陸に成功…電池が無くなるまで81枚、ホイヘンスは写真を送り続けました。

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ジョンズ・ホプキンス大学 ラルフ・ローレンツ博士
ホイヘンスは水無し川に着陸しました。丸石が転がっていました。これは氷で出来ているのですがかつては液体メタンの小川の中で転がったものです」

アリゾナ大学 ロバート・ブラウン教授
「普通の靴に短パンにTシャツで出て行きたいところではありません…-170度の世界です」

厚い雲の下に広がるタイタンの大地は不思議な事に地球そっくりの風景でした。


FRONT5
衛星

土星には60を超える衛星があります。そのうちタイタンだけが圧倒的に大きく、直径5200キロ、他の衛星全てを合わせてもその大きさはタイタンの1/20にも及びません。

一方、隣の木星では、…イオ直径3600キロ、エウロパ直径3100キロ、、ガニメデ直径5300キロ、カリスト直径4800キロ、と大きな衛星が4つも存在しています。

なぜ土星にはタイタン一つしか大きな衛星がないのでしょうか?…サウスウエスト研究所のロビン・キャナップ博士は、土星にもかつて大きな衛星が沢山あってその後、土星に吸い込まれたといいます。

サウスウエスト研究所 ロビン・キャナップ博士
「このかつてあった大きな衛星が吸い込まれる過程でリングが形作られました」

キャナップ博士が考えるシナリオです。
今から45億年前、誕生直後の土星の回りには、タイタンと同じぐらいの衛星がいくつか巡っていました。…生まれたばかりの土星の回りにはまだ大量のガスが残っています。

ガスの中を巡るために衛星はスピードを落とし、徐々に土星に近づいて行きます。すると土星の強い重力の影響を受けて衛星の形が歪みます。…そしてある限界線を超えると強い重力で衛星の表面が砕けます。こうして土星のリングが形作られていったのです。

大きな衛星では外側に氷、内側に岩石が含まれています…ですから岩石で出来た部分は土星の重力に耐えられたのです。外側の氷だけ砕け散って岩石部分が土星に吸い込まれたのです。

ですから土星の環は純粋に氷だけで作られています。

衛星パンドラ
土星の近くを回る衛星パンドラはレモンのような形をしています…通常、衛星の重力圏は球形です。だから衛星は丸い球に成長するのです。

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ところがパンドラはあまりに土星の近くにあるため土星の重力の影響を強く受けます…その結果、重力圏は歪、レモン型になったのです。

衛星ハイぺリオン
土星には更に個性的な衛星があります。衛星ハイぺリオンです…密度は水の半分ほどしかありません。(密度0.55/立方センチ)

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サウスウエスト研究所 ジョン・スペンサー博士
「この姿は、内部がスポンジ状になっているのが原因だと考えられます…普通は天体が衝突すると大量の物質を噴き上げて周囲のクレーターを覆い尽くします。しかし空洞が多いとただ中が圧縮されて深いトンネルが出来るだけなのです」

これほどスカスカの衛星は太陽系の中でも珍しいといいます。


衛星イアペタス
ぐるりと赤道を取り囲む高さ2万メートルにも達する山脈が研究者たちを驚かせました。

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NASA ジェット推進研究所 ジュリー・カスティロ博士
「イアペタスを見た時は感動しました。胡桃のような形の衛星なんて初めて見ました」

サウスウエスト研究所 ジョン・スペンサー博士
「最高2万メートルもの高さ山脈です…エベレストよりも高い山脈がちょうど赤道に沿って長く続いています。イアペタスの3/4です。出来た時は全部を囲んでいたのがその後の衝突で破壊されたのでしょう」

NASA ジェット推進研究所 ジュリー・カスティロ博士
「この山脈が発見された時は突拍子もない説が出されました…2つの天体がハンバーガーを作る時のように衝突して巨大な山脈が作られたという説もかつてはとなえられました」

サウスウエスト研究所 ジョン・スペンサー博士
「私が信じている説は、かつてイアペタスを取り巻くリングがあったというものです」

イアペタスは直径1500キロと比較的大きな衛星です。しかも土星から遠くその重力を受けにくい状況にあります。この為、太古のイアペタスは自らの重力により、立派なリングを持っていたに違いないと思われています。

そしてリングが出来るのは赤道の真上です。

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サウスウエスト研究所 ジョン・スペンサー博士
「リングを形作る粒子が互いに衝突しあいエネルギーが失われ、イアペタスの赤道上に落ちていったのです…そして粒子は赤道上に積み上がったのです」

これまで紹介したのは、土星の衛星のほんの一部です…60個を超える衛星たちの一つ一つにダイナミックな歴史が刻み込まれているのです。

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上記画像は、カッシーニが故郷地球を振り返って撮った実写の写真です。リングに紛れそうな微かな青い点、これが私たちの住む地球です。

カッシーニから続々と届く写真、そこには新しい発見が満ち満ちています。

NASA ジェット推進研究所 主席科学者 ケビン・ベインズ博士
「今後は惑星や衛星の環境を守る事も考えるべきかも知れません…タイタンでメタンを取りたいとおもうでしょうか…とにかく美しい土星だけは手つかずにしておくべきです」

興味深い衛星が沢山ある事からこのミッションは2017年まで延長される事が決まりました。太陽系一美しい惑星、土星…探査機カッシーニは、今この瞬間も土星の回りを巡っています。

この先、どんな発見が待ち受けているのかリングの惑星を巡る冒険の旅は続きます。

 

 

 

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