(地球の出)
NHK コズミックフロント
発見!驚異の大宇宙
ムーンラッシュ! 月開発最前線
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月の宝を掘り当てろ!
中国 温家宝首相
「今こそ私たちの力を結集し、月探査計画における目標の達成を早急に実現する必要があります」
2003年に始まった中国の月探査ミッション、『嫦娥計画』(じょうがけいかく)…2020年代前半には人類を再び月へ送るという計画に国の威信をかけて臨んでいます。
狙いは月に大量に存在するといわれる資源、特に中国が注目しているのが ”ヘリウム3” です。
ヘリウム3は、地球には殆ど存在しません…これを使って核融合が出来れば膨大な電力を生む事が出来るといいます。
核融合は小さな太陽とも言われ、二酸化炭素の放出が無い事から、次世代のエネルギーとして期待されています。
月にはヘリウム3は、60万トン眠っています…中国は月採掘の準備を着々と進めているのです。
一方、インドも2020年の有人探査を目指しています。ヨーロッパ、ロシアも次々と参戦、…今、月は夢と冒険の舞台から、開発の現場へと移り変わろうとしているのです。
(2007年9月14日 かぐや 打上げ)
開発ラッシュの背景には、2007年に打上げられた日本の月周回衛星、 ”かぐや” があったのです。アポロ計画以来の本格的月探査です。
月を徹底的に調べつくす…それが”かぐや”に託されたミッションです。かぐやが写し出したのは、かつてない鮮明でリアルな月の姿でした。
かぐやは1年半の間に、月を6500周しました…計測地点は1000万ヶ所を超えました。中でも画期的だったのが月の精密な立体地図を完成させた事です。
臨場感あふれる3Dデータ、月の起伏が手に取るようにわかります。かぐやの地形データで世界から最も注目をあつめたのが月の北極と南極、つまり極地です。
実は極地は月を開発する上で重要な場所なのです。…南極のクレーターには一年中太陽光が差し込まない ”永久影” と呼ばれる場所があります。
そこは常にマイナス160度という極低温が保たれています。かぐやはこの永久影を南極でたくさん見つけたのです。
(永久影)
(月探査機エルクロス)
2009年、アメリカが再び月探査に乗り出します…月探査機エルクロス、目的は、かぐやが見つけた永久影の場所から水を見つける事でした。
ロケットを秒速2.5キロで永久影に激突させるのです…その時舞いあがったチリの中から水を採取するのです。
しかし問題が…永久影の中の深さがわからなかったのです…深すぎればチリが舞い上がりません…そこでJAXAに助けを求めます。
JAXAはNASAの求めに応じてかぐやの撮ったデータを開示、永久影の深さは問題ないと確認する事が出来たのです。
そして月探査機エルクロスはロケットを発射、無事チリが舞い上がります…水が確認されました…しかも大量にある事がわかったのです。
大量の水が見つかった事で月面での長期滞在が実現的になったのです。…NASAは、かぐやのデータを元に月面基地の建設に向け、南極の地形を詳細に調べています。
かぐやは将来の基地建設に最適な場所も見つけていたのです…月では昼が2週間続いた後、夜が2週間続きます。
しかも夜はマイナス160度、月の夜をいかにして乗り超えるかが最大の課題、…ところが南極の永久影がある場所のすぐそばに、1年で320日太陽光が当たる場所があったのです。
ここなら夜の寒さから身を守れ、十分な太陽光も確保できるのです。
月面基地のエネルギーは豊富な太陽光から確保します。そして永久影から水を確保して長期滞在が可能となるのです。
(月面車)
今、NASAでは月で移動するための月面車や基地建設ロボットなどが着々と開発されているのです。
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新たなる挑戦者たち
ハワイ・マウナケア山、その麓に広がる月の環境に似ている砂漠、ここで月探査ローバー・ムーレイカーのテスト走行が行われています。
(吉田さん開発 月面ローバー)
開発者の吉田さんは、あるレースに参加しています。アメリカの民間財団による賞金総額3000万ドルのレースです。
そのルーツは1920年代に遡ります。飛行機で海を渡る事、…しかしそのチャレンジは、失敗に次ぐ失敗、そこでアメリカの資産家が巨額の賞金2万5000ドルを設け挑戦者を募ったのです。
1927年、その取り組みはリンドバーグにより、大西洋無着陸横断飛行の成功を導き、航空技術の急速な発展をもたらしました。
(チャールズ・リンドバーグ)
2004年、今、賞金レースの舞台は宇宙に移っています…民間初の有人宇宙飛行へのチャレンジ、カリフォルニア州のベンチャー企業が見事成功し、賞金1000万ドルを手にしました。
これをキッカケに現在アメリカでは、民間宇宙飛行ビジネスが本格化しています。
そして今回の賞金レースの舞台が月です。ミッションは2つ…
1.ローバーを月に送り、月面を500m以上走行する事
2.指定された高画質の映像を地球に送る事
…この2つを最初に成し遂げたチームが賞金2000万ドルを手にします。
ボーナスもあります…
1.400万ドル…アポロ計画が残した機材を撮影する
2.200万ドル…2週間続く月の夜を乗り越える
…賞金総額3000万ドルの大レースです。
現在世界各国から23チームがエントリーし、ミッション達成に向け凌ぎを削っています。