WBS ワールドビジネスサテライト
自分を見つける一冊 スミスの本棚
作家・真山仁が薦める本
ブライアン・フリーマントル著 『消されかけた男』
企業買収を描いた経済小説 『ハゲタカ』 は、ドラマ化・映画化され累計178万部の人気シリーズになりました。
次々と企業買収を仕掛け、ハゲタカの異名をとる主人公・鷲津政彦、このキャラクターを描く上で参考にした本があるといいます。
『消されかけた男』、イギリスの諜報部員チャーリー・マフィンが様々な国の組織を相手に戦うスパイ小説です。
作家 真山仁
「鷲津政彦(『ハゲタカ』主人公)という日本最強の買収者を作った時に、チャーリーみたいにしようと思いついたんです。…本当に凄いスパイは、彼のようなタイプです。」
はき古した靴に
色褪せたシャツ
冴えない風貌の中年男チャーリー…実は凄腕のスパーなんです。
作家 真山仁
「実際の実社会でも、本当に出来る人は、 ”俺はすごい” と言いません。俺は凄いという人は大体ダメ…黙々と結果を出して、さも当たり前のようにやる人が実は凄いんです。」
任務を遂行すべくヨーロッパを奔走する中、
次第に追い詰められて行く、チャーリー
苛立ちと不快感で
まいっているにもかかわらず
チャーリーはにやりとした
この3ヶ月間、1つないし
それ以上の組織から
複数の監視を受けていない瞬間は
全然なかったといってもよかった。
(『消されかけた男』より)
(作家 真山仁)
WBSキャスター 森本智子
「上からもにらまれ、下からも足を引っ張られる…今のしがないサラリーマンたちが、チョット身につまされる部分が外国の話ながらもすごく共感できますね」
作家 真山仁
「… そうですサラリーマン小説ですよ。組織の中で ”上と下サイテー” と思いながら、でももしかして自分も最低と思いながら、悶々とする。
遠い話だと思っているのに ”いや、これはうちの課長と同じ” みたいな感じで…。…」
限りなく散りばめられた伏線
最後に待ち受ける大どんでん返し
毎日に停滞を感じている人が読むと、また違った目で日常が見えてくると真山さんは言います。
作家 真山仁
「… 視点を変えるだけで自分は何を見ているのか、何が一番人生の中で大事かと思っている事を少しずらすだけで、劇的に停滞は変る。
動かないのは、もしかして自分がだまされているのかもしれない…動かないのなら私が動かせばいいと思える本です。…」
WBSキャスター 森本智子
「この小説、最初から注意をして視点をちょっと変えて読み進めると、この主人公チャーリーが伏線を張って準備をずっとやってきて、自分で人生を切り開いてきたというのが、読み方一つ変えるだけでこの生き方を学べます。」
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真山仁のシリーズ最新作は世界的金融危機リーマンショックをテーマに描かれた 『グリード』(greed) です…このタイトルは強欲という意味で日本ではマイナスイメージがありますが…
作家 真山仁
「… ニューヨークで全員にいわれました ”グリード イズ グッド” アメリカンドリームはグリードがなければ生まれないんです。負けない為のサバイバルで一番強いのは前へ前へ進む欲望なんです。
単なる欲でなくて、強い欲が必要なんです。本当の親友になるか、距離をあけるビジネスパートナーになるか、いろんな局面で考えなきゃいけない時が来ていると思います。 …」
グリードは良いことだ!…リーマンショックを経てもアメリカ人の考えは変わらないと真山は言います。