旅cafe

旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。…当ブログ記事は転載OK…リンクを貼っていただけるなら遠慮なくお好きにお使いください。

白川郷 ~時を超え、合掌造りの知恵を解き明かす~

f:id:tabicafe:20200610173036j:plain

NHKアインシュタインの目より
白川郷 ~時を超え、合掌造りの知恵を解き明かす~

岐阜県北部、白山連峰を望む山間の里、白川郷世界文化遺産として知られるこの地には、毎年150万人もの観光客が訪れます。

中でも一帯が雪に覆われる冬は、幻想的な雰囲気に包まれ、多くの人を魅了します…観光客のお目当ては、合掌造りといわれる茅葺の民家、白川郷にはおよそ80もの合掌造りが立ち並び、その殆どが築100年を超えます。

多くの建物で飲食店や民宿が営まれ、生活の場ともなっています。…しかし、この地域は豪雪地帯、毎年2m近くの積雪があり、強風も吹き抜けます。

厳しい自然環境の中、なぜ100年以上も持ちこたえる事ができたのでしょうか…長期の撮影によってそこには様々な工夫がある事がわかりました。

時を超え、雪の中にたたずむ合掌造り、そこに秘めっれた先人たちの知恵を解き明かします。


白川郷 合掌造り
雪の重みに耐える秘密

大きく張り出した屋根が特徴の合掌造り、下記の建物は、高さ16m、4階建てのビルに相当します。

f:id:tabicafe:20200610173136j:plain

中に入ってみると実は、平屋…囲炉裏を中心に人々が暮らす部屋が広がります。…そして階段を上がるとそこは仕切りのない空間、人々はかつてここでカイコを飼って生計を立てていました。

f:id:tabicafe:20200610173155j:plain

屋根裏は、柱と萱がむき出しで、柱と柱は藁縄や細い樹木で結ばれているだけ、釘など一切使われていません。

合掌造りは殆ど同じ向きに建てられているのです…屋根の面しているのは東と西、その為、午前中は東側の屋根に日が当たり雪が溶けます、日が傾く午後には反対側の雪が溶けて行きます。

f:id:tabicafe:20200610173212j:plain

白川郷の合掌造りは、一日中、日が屋根に当たるよう設計されていたのです。

豪雪が続く1月、ここでは屋根に1m以上、雪が積もると雪下ろしをするのです…屋根には60度の傾斜があり、一気に雪を落とす事が出来ます…この形も豪雪地帯で生きる先人たちの知恵なのです。

それにしても1mの雪に耐える合掌造り、いったい屋根にはどの位の重さがかかっているのでしょうか…そこで1㎥の箱を用意し、雪を一杯に詰めます…重さ378キロ。

屋根の面積400㎡×378㎏=152トン…大型ジェット機1機分に相当します。…これほどの重さに耐えられるのは、建物にかかる力を上手く逃がす合掌造りの構造にあるのです。

合掌造りの屋根は、実は梁に乗っているだけで固定されていません…斜めに組んである先端を細く削り、それを梁に差し込んであるだけです。…この部分をコマじりと言います。

f:id:tabicafe:20200610173252j:plain

f:id:tabicafe:20200610173306j:plain

f:id:tabicafe:20200610173317j:plain

実際のコマじりです…350年前の江戸時代中期には使われていたコマじり、合掌造りが雪の重みに耐える重要な役割を果たしていたのです。

信州大学工学部・松田昌助教チームに2分の1サイズのコマじり方式と屋根を固定した方式でを再現してもらい圧力実験をしました。

徐々に圧力をかけ、高感度サーマルカメラの映像を比較すると固定方式は、横と縦に力が分散してかかっているのに対し、コマじりは縦方向だけに力がかかっているのです。

f:id:tabicafe:20200610173333j:plain

これは何を意味しているのでしょうか?

信州大学工学部 松田昌助教
「木材および骨組はは、縦の力に強く、横の力に弱いのです…合掌造りは、雪の重みをそのまま垂直方向に流してゆく、柱に横の力をかけない、余分な負担をかけないと言った点で積雪に耐える有利な建築方式と考えます」

屋根部分の接合にも秘密があります…ネソ(マンサクの若木)という白川郷に周辺に生える木の皮を利用して接合しています…この皮が非常に強いのです。

さらに屋根全体を固定せず、ネソや藁縄で縛る作りにより、適度に力が分散されるのも合掌造りの強さの秘密です。


かやぶき屋根は、なぜ
水が漏らないのでしょうか?

合掌造りの特徴は、大きなかやぶき屋根、かやぶきの萱とは、ススキやアシなどの総称、葺き替えの作業は、およそ30年ごと…束ねた萱を1mの厚さに積み重ねていきます。

f:id:tabicafe:20200610173417j:plain

それにしても、かやを並べただけの屋根で雨漏りはしないのでしょうか?…内視鏡レンズで見ると萱が濡れていたのは表面から20㎝前後だけ、その下は乾いたままでした。…これは萱の特性と関係があるのです。

東京工業大学 田中亨二 名誉教授
「かやは、はっ水力が弱い材料です…はっ水力が弱い方が雨漏りはしづらくなります」

はっ水力とは水をはじく力、かやを水で濡らすと水はかやにくっつこうとします…これは萱の水をはじく力が弱い証拠、…いったいどういう事なのでしょうか?

f:id:tabicafe:20200610173444j:plain

水の流れを見やすくするために、萱のはっ水力に近いガラス管を使って実験します。…スプレーをかけ、はっ水力を高めたガラス管と通常のガラス管で比較します。

f:id:tabicafe:20200610173458j:plain

萱葺き屋根と同じように0.3ミリほどの隙間を作り3層に重ねます。…それを角度を付けた台に設置し毎時、300ミリの水で濡らします。

はっ水力が強いガラス管は、水が漏れてしまってます…一方、はっ水力が弱い方では一滴も漏れていません。…水はガラス管とガラス管の隙間を流れています。

なぜはっ水力の違いで水の流れに違いが出来たのでしょうか。

東京工業大学 田中亨二 名誉教授
「はっ水力が弱いとかやは水をくっつける力が出てくる、そうすると下に落ちない…萱葺き屋根はかやが何層にも重なっています…水の表面張力で萱と萱の間に水が保たれ、勾配によって排水されるのです」

はっ水力が弱い萱どうしを束ねると水はその隙間にとどまります…そして屋根の傾斜に沿って流れていきます…自然の素材を利用した萱葺き屋根、そこには植物の特性を活かした驚くべき知恵があったのです。

筑波大学教授 安藤邦廣さん
「萱と萱の隙間は雨水を通すだけでなく、空気層を作り出す、夏涼しく、冬暖かい、つまり断熱材的効果があるのです」

もうひとつ…古い萱は宝だったのです。合掌造りは養蚕をする生業です…回りにはカイコの餌の桑畑があります…古い萱は最高の桑畑の肥料になったのです


合掌造りを長持ちさせる
囲炉裏の煙パワー

雪に閉ざされた白川郷、厳しい寒さを乗り越えるのに必要だったのが囲炉裏です…寒い夜、赤々と燃える火を囲みながらの団欒は、心和むひと時です。

f:id:tabicafe:20200610173546j:plain

囲炉裏は優れた暖房器具ですがそれだけではあろません…木材の材質を研究する宇都宮大学の石栗太さんによると。

宇都宮大学 石栗太 准教授
煙の中には抗菌性の成分ががあり、菌が伸びづらくなるのです…煙に含まれる抗菌性物質が柱などの表面に付く事によって菌が繁殖しないのです

f:id:tabicafe:20200610173602j:plain

合掌造りの室内を見渡すと柱や梁が黒くなっています…これは長い年月にわたって煙の煤がついたため、これが菌の繁殖を防ぎ、100年以上も建物を長持ちさせたのです。

合掌造り…山で暮らす自然の厳しさと自然の恵み、両方を知り尽くした知恵の深さに驚かされます。

f:id:tabicafe:20200610173618j:plain

 

管理人お奨め記事

www.tabi.cafe