旅cafe

旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。

静かなブーム 仏像

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奈良 興福寺 国宝館

仏像・仏

お寺に行くと沢山の仏像に出会うことが出来ます。

仏像、仏について…
意味は?
御利益は?
何種類?
役割って?
…など知っておくと、お寺参りがいっそう楽しいものになります。

近年、 ”仏女” …仏像女子なる輩が登場しているらしいです。
仏像に静かなブームが来ているようです。

お寺や美術館に仏像を見に行くだけでは飽き足らず、最近は生活の中でインテリアとして楽しむ人、お部屋に置いて朝晩拝む人など、生活の中に取り入れる人が増えている、なんて事もききます。

本格的に仏像ブームの到来かも知れません。
今回は、そんな仏像について語ります。

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女子に大人気 唐沢寿明似のイケメン仏像 東寺の帝釈天騎像

仏様にも階層がある…
如来が一番偉い!

仏には様々な種類がありますが、大きく分けると…
如来
・菩薩
明王
・天
…の4つにわけることが出来ます。

 

如来(にょらい)

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最も位が高いのが如来

如来サンスクリット語でタターガタといいます。「如」には真実という意味があり、「如来」で真理の世界から来た者、すなわち悟りの境地に達した者となります。

仏像の始まりは、仏教の開祖である釈迦を具現化した釈迦如来です。当初は釈迦のみでしたが、大乗仏教で様々な如来が考え出されました。

・釈迦如来…お釈迦様
・毘盧遮那如来…全宇宙を統括する仏。(奈良の大仏
大日如来…太陽を神格化
阿弥陀如来…極楽浄土の案内人(鎌倉の大仏)
薬師如来…医療の仏

如来の特徴としては…
・服装は簡素
螺髪(らほつ)がある。※螺髪はブツブツ状の髪型の事
・ふくよかな顔立ち
・持ち物を持たない
…などがある。

菩薩(ぼさつ)

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菩薩の正式名称は菩提薩埵です。サンスクリット語名のボデーィサットヴァを音写した言葉で ”悟りを求める者” という意味があり、菩薩は悟りを開く前の修行の段階にいますが、将来、如来となる事が約束されています。

如来より近い立場で衆生を救うため、民衆に親しまれて、菩薩人気は高まりました。

弥勒菩薩…釈迦の次に悟りを開くとされる仏
文殊菩薩…知恵を司る仏
・観世音菩薩(観音様)…たくさんの人を救うべく無数の顔や手を持つ
地蔵菩薩(お地蔵様)…地獄に堕ちた人をも救う仏。庶民に人気
普賢菩薩…普賢とは「全てにわたって賢い者」という意味で、あらゆるところに現れ命ある者を救う行動力のある菩薩です

菩薩の特徴としては…
・冠や首飾りなど装飾品を身につけている(地蔵菩薩は例外)
・様々な道具を持っている
…などがある。

 

明王(みょうおう)

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明王は、サンスクリット語でヴィドゥヤー・ラージャといい、ヴィドゥヤーには真言(明呪)、ラージャは王という意味があります。

密教の仏様
ダメな人を力ずくで仏教に帰依させて救済する役目を負う。

つまり、明王とは真言の力を持つ最たる存在です。明王密教から生まれた仏で、密教では真言の効力を重要視しています。

また、密教における最高尊は、大日如来ですが、明王はその化身と考えられています。

不動明王…怒りを救済へつなげる大日如来の化身
愛染明王…煩悩を悟りへつなげる愛欲の王

明王の特徴としては…
・怒りの形相
・さまざまな武器を持っている
・岩や動物などいろいろな物に座している
・手や足や顔の数が違う
…などがある。

 

天(てん)

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天はサンスクリット語名をデーヴァといい、最も種類が多いのがこの天です。元は、バラモン教ヒンドゥー教の神々でしたが、仏教の世界に煩悩が侵入することを防ぎ、人々が悟りに至ることを応援する存在であり、人間と仏の間に存在するものなのです。

また、中国や日本の神の影響が見られるものもあります。天の神の傾向として、効験が一点に特化しているものが多く、現世利益的です。

毘沙門天・弁財天・大黒天・梵天金剛力士など

天部の特徴としては…
武装している
・山門や入り口に安置されることが多い
・性別がはっきりしているものがある
…などがある。

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如来大日如来阿弥陀如来・釈迦如来薬師如来など
菩薩弥勒菩薩観音菩薩普賢菩薩・千手観音・地蔵菩薩など
明王不動明王愛染明王など
天部毘沙門天・弁財天・大黒天・梵天金剛力士など
…の4階層となります。

仏様ファッションチェック

仏の衣装と髪型には、如来、菩薩、明王、天、それぞれ共通した特徴があります。

如来如来は出家し、悟りを得た後の姿なので、シンプルに布をまとうのみ
菩薩:装飾品を付けた貴族のいでたち
明王:力づくで教化するため、恐ろしい外見と憤怒相
天部:インドの神から、多面多臂(顔と頭が多い)、半人半獣など

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天・明王・菩薩・如来

観音様がなくね…

そもそも…観音様って女性なの?

観音様というのは、
観世音菩薩を略したもので、
観自在菩薩という名で呼ばれていることもあります。

世の中を観ずる菩薩、
人々の救いを求める声を聞いてすぐに救って下さる方、
世の中を見通すことが自在であり、
また救済することも自在であるということを
表したのが観音様のお名前であるというのが、
一般的な解釈です。

法華寺の十一面観音などいかにも女性的な感じで、
光明皇后をモデルにして刻まれたという伝説があるのも
もっともなような気がします。

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法華寺 十一面観音

観心寺如意輪観音のように官能的なまでに、
女性的な観音像もあります。

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観心寺 如意輪観音

仏の境界を目指して修業中の方で、
まだ解脱を得ておられず、

菩薩道でいうと51段目か52段目まで
進んでおられて、求められれば、
明日にでも仏様になれる力をもっておられる方々です。

それでも仏の境界におられるわけではないので、
形としては現世におられる姿として
表現されることになっています。

結論を申しますと…観音様は、男性です。

法華寺の十一面観音様(上記画像)もよく見ると、
お顔におひげが描かれています。

鎌倉時代以前の古い仏像は大体そういっていいと思います。

 

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運慶作『無着=西行』像、木造、像高194.7㎝ 興福寺北円堂

運慶と快慶

学校の歴史の授業で習って頭に焼き付いているフレーズ…
「運慶と快慶」
…仏像を語って、この二人の話をしないわけにはいきません。

当時の時代背景から説明しましょう…。
日本への仏教伝来は、飛鳥時代です。その際、仏像制作技術を持った仏師と称した技術集団も渡来したのです。

仏師は大寺院の ”お抱え技術集団” として仏像、仏教絵画(絵仏師)などを制作していました。しかし、この頃は無名の集団で身分も無かったんです。

奈良から京都に都が移り、平安時代になると一人の天才が登場します。それが定朝(じょうちょう)という人物で、定朝は寄木造という仏像製作方法を発案し、貴族受けする仏像を次々と製作します。

この定朝、朝廷より僧の身分を与えられるほどの成功者となります。定朝から、仏師が表舞台に出る事となり、仏像製作者の名前が残されるようになります。

その定朝の弟子たちが流れを作り…
院派
円派
慶派
…の3つの派閥を形成します。

・院派、円派は主流として京の都で活動
・対して慶派は傍流…奈良で地味に制作活動を開始します。

世は平氏全盛時 「平家にあらずんば人にあらず」の時代です。
・美味しい華やかな仕事は全て京都
・傍流の奈良には地味な仕事しかない

そこに転機が到来します。 源平合戦勃発” …。

平清盛の命を受けた平重衡平氏軍が、東大寺興福寺など奈良(南都)の仏教寺院を焼討にした ”南都焼討” が起きてしまいます。(大仏焼失が有名ですね)

奈良に特需が起こったんです。

1180年に東大寺が全焼すると、すぐに東大寺興福寺復興の超巨大プロジェクトが動き出します。

1185年、大仏が完成
1195年、大仏殿も完成
1203年、東大寺南大門の再建
…奈良の慶派が、この巨大復興プロジェクトを推し進めます。

そして運慶・快慶の代表作、東大寺南大門の金剛力士像の製作が始まります。

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東大寺南大門の金剛力士
「快慶 制作 阿形」・「運慶 制作 吽形」

左(西側)は、快慶が制作した阿形
右(東側)は、運慶が制作した吽形

寄木造りという、沢山のパーツをパズルのように組み合わせて作った仏像なので、分業して製作する事が可能になりまして、2か月という驚異的な速さで完成させました。

ここで運慶と快慶の関係を説明しておきます。

慶派を起こした康慶(こうけい)は、運慶の父親です。
運慶、快慶は、康慶の弟子として慶派で仏師をしていました…
・運慶:師匠、康慶の弟子でありながら息子
・快慶:康慶の数ある弟子の中の有力な一人にすぎない
…二人は同じ工房で仕事をしていたのです。

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仏師系図

そして「盛者必衰の理をあらわす」平氏の滅亡です。平家という最大のお客様、スポンサーを失った京都の仏師たち、院派、円派は衰退して行き、…逆に慶派は鎌倉に近づき隆盛を誇るようになるのです。

この頃より、運慶と快慶の目指す作風が分かれてきます。

運慶は、鎌倉幕府に近づき武家好みの質実剛健、質素でありながら男性的で荒々しく、激しさを追求する作風に変化してゆきます。

そして運慶は、師匠である父・康慶より慶派を引き継ぎ慶派チームを指揮してプロデューサー的な立場で 組織力で仕事をする” 様になりました。

組織を維持するためには、政権に近づく必要もあり、更に鎌倉に接近していったのです。

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運慶《毘沙門天立像》1186年(静岡 願成就院所蔵)

対して快慶は…

快慶は浄土宗を信仰しており、自らを「安阿弥陀仏」と称し、大衆の中に入って行ったのです。

作風は、優雅で繊細なものになって行き、当時爆発的に信者を増やしていった浄土宗とともに。快慶の仏師としての名声も上がって行ったのです。

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快慶作 文殊菩薩騎獅像(奈良 文殊院

運慶と快慶、二人の進む道は分かれてしまいましたが、運慶がよせる快慶への信頼、仏師としての尊敬は揺るぎないものでした。

管理人は、この二人には、友情も存在していたのではないかと思います。 
そして運慶が息子・長男の湛慶(たんけい)の師に選んだのが快慶でした。

快慶の下、修業した湛慶は後に…
・運慶の力強さ
・快慶の優美さ
…を兼ね備えた優れた仏師になります。

そして湛慶最晩年の82歳の時に、京都・妙法院蓮華王院本堂(三十三間堂)本尊の千手観音の巨像を完成させるのです。

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湛慶作 千手観音像 京都・妙法院蔵(三十三間堂安置)

そして運慶、快慶に並ぶ仏師として湛慶の名前が上がるほどになるのです。

 

管理人の独り言

どうですか…仏像に興味がわいてきたでしょう。

仏像って本当に面白いんですよ。
仏像がわかると、お寺観光の魅力が2割アップします。

皆様は、訪れる観光地で…
・運慶作
・快慶作
・湛慶作
・康慶作
・定朝作
…に巡り合う事があると思います。

その時は、特別な目で仏像を見てください…そして静かに手を合わせましょう。

 

はい!…ここで管理人の大好きなランキングのお話しです…

全国の男女1000人に聞いて仏像に興味があると回答を得た364名の…

最も愛された仏像ランキング
1位:弥勒菩薩
2位:不動明王
3位:毘沙門天
4位:大日如来
5位:大黒天
6位:帝釈天
7位:韋駄天
8位:地蔵菩薩
9位:鬼子母神
10位:梵天
11位:吉祥天
12位:如意輪観音
13位:摩利支天
14位:孔雀明王
15位:聖観音
16位:愛染明王
17位:馬頭観音
18位:歓喜天
18位:五髻文殊

…という結果が出ています。

仏像、面白いです。
是非、興味を持って頂ければと思います。

 

 

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