日本一の庭園 足立美術館
島根県安来市の郊外に、2003年から17年連続で庭園ランキング日本一に選ばれている美術館があります。
足立美術館は、横山大観をはじめとする近代日本画を中心に総数約1500点を所蔵しているほか、5万坪の日本庭園は、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」による庭園ランキングで、17年連続日本一に選ばれました。
このランキングは、「いま現在鑑賞できる日本庭園としていかに優れているか」を基準に調査・選考されており、特に足立美術館は、広大な庭園の細部にまで維持管理がゆきとどいている点が高く評価されているそうです。
庭園もまた一幅の絵画
庭を美術品として展示してしまったんです。この庭が素晴らしい。…庭がメインの美術品です。
美術館創設者、足立全康は「庭園もまた一幅の絵画である」という信念のもと、91歳で亡くなるまで、庭造りに心血を注ぎました。
枯山水庭をはじめ、5万坪に及ぶ6つの庭園は、四季折々にさまざまな表情を醸出し、借景の自然の山々との調和はまさに生きた日本画ともいえるでしょう。
①枯山水庭、②苔庭、③白砂青松庭、④池庭、⑤亀鶴の滝
①枯山水庭
自然の山々と人工の庭園との調和が美しい足立美術館の主庭です。雨上がりの一瞬の情景です。画面の左側には虹がかり、庭園には光がさし、借景の山々は徐々に紅葉を始めています。色彩の美しさを感じていただけることでしょう。
枯山水庭の石組です。中央に配置されている三つの立石は峻厳な山をあらわし、そこから流れ落ちる滝水はやがて、手前に広がる白砂へと流れ込む。大自然がもつ深遠な風趣を枯山水という伝統的な手法により表現しています。
②苔庭
苔庭の赤松はすべて斜めに植栽されています。
これは、山の斜面に生まれ、成長してきたものを平坦な地に垂直に植えるということは、樹木にとって大変な苦痛になるという設計者の考えによるものです。
③白砂青松庭
横山大観の名作≪白沙青松≫をモチーフに、足立全康が心血を注いでつくった庭園です。なだらかな白砂の丘陵に大小の松をリズミカルに配置しており、大観の絵画世界を見事に表現しています。
④池庭
水面に映る光と影が、見る人のこころにやすらぎを与えてくれる秋の池庭です。正面には煎茶室「清風」があり、大小の木々や石組と相まって格調高い風情を見せます。
雪が降り、静寂の世界に包まれた池庭です。水量豊かに湧き出す水は、水温が安定しているため、冬でも鯉は冬眠することなく悠々と泳いでいます。
⑤亀鶴の滝
亀鶴の滝は、横山大観の≪那智乃瀧≫(当館蔵)をイメージして、借景となっている亀鶴山に開瀑した人工の滝です。岩肌から15mの滝が流れています。大観作品を庭園で表現するという発想は、まさに当館ならではといえるでしょう。
生の額絵
「庭園も一幅の絵画である」という、創設者足立全康のことばどおり、館内の窓枠をそのまま額縁に見立てた生の額絵です。四季のうつろい、光の陰影とともに変化する、自然による生きた絵画です。
生の掛軸
生の掛軸です。壁がくりぬかれ、その向こうにある庭園をご覧いただけるようになっています。あたかも一幅の山水画が掛かっているかのように、しかも掛け替える必要もなく、季節や時間による変化をお楽しみいただけます。
庭園の四季
春
青く爽やかな空、萌える新緑、白砂のコントラストに
春を待ちわびて咲いたつつじの花が可憐な色を添える春の白砂青松庭です。
春の生の額絵です。
四季のうつろいとともに変化する、自然による生きた絵画です。
夏
雨に煙る夏の枯山水庭です。山々の間からは霧雲が立ちのぼり、その姿を刻一刻と変化させ、やがて静かに大気に溶け込んでいきます。また、雨に濡れた木々や庭石は庭園にしっとりとした趣を与え、晴れた日とはまた違う風情が感じられることでしょう。
窓近くのクスノキが影となり、
芝の青さがいっそう引き立つ夏の生の額絵です。
秋
ドウダンツツジが色づいた秋の枯山水庭です。
この時期の庭園は、松や芝生の緑色とドウダンツツジの赤色のコントラストが見どころです。
秋には、苔庭のドウダンツツジや楓が赤く染まり、苔の上には紅の絨毯が敷きつめられます。 苔の緑、白砂の白と相まって素晴らしい色彩の妙を見せてくれます。
冬
雪化粧をした枯山水庭は、
まるで横山大観の水墨画を観ているようです。
雪の白砂青松庭です。年々雪は積もらなくなっていますが、シーズンに何度かは雪化粧をした庭園をご覧いただくことができます。 普段とはことなる風情で我々の目を楽しませてくれます。
所蔵品
近代日本画:横山大観、竹内栖鳳、前田青邨、川合玉堂、川端龍子、菱田春草、土田麦僊、上村松園、榊原紫峰、小林古径、速水御舟、橋本関雪、伊東深水、安田靫彦
現代日本画:平山郁夫、松村公嗣、松尾敏男、吉村誠司、後藤純男、村上裕二、那波多目功一、倉島重友、手塚雄二、小田野尚之、宮廻正明、宮北千織、西田俊英、大野逸男
陶 芸:北大路魯山人
童 画:林 義雄、鈴木寿雄、川上四郎、武井武雄、黒崎義介
…ら、1500点
足立美術館 利用案内
入館料:2300円
駐車場:無料(大型バス 40 台 普通車 400 台収容)
管理人の独り言
まず皆さんは、足立美術館の展示美術品の質、量に驚かされます。じっくり見てるといくら時間があっても足りません。
庭も午前と午後、朝と夕では、また違った顔を見せてくれます。
とにかく、時間に余裕を持って来ていただきたい。
最後に、この美しい庭園のひみつ…
足立美術館には、7名の専属の庭師がいらっしゃって、日々様々な手入れや維持管理を行っています。
それに加え、庭師以外の美術館職員も、開館前には総出で清掃作業を行っているのだそう。 昭和45年の開館から年中無休で繰り返されている伝統ということで、こうした手間暇から世界一の庭が生まれているんです。
参考サイト:「足立美術館|ADACHI MUSEUM OF ART」
2020/07/16:情報提供有り追記
足立美術館…借景となる山並みは、自然を守れるように、足立美術館でほとんど買いとっているそうです。(ビルが建ったり、ハゲ山になったりしたら困るから。)なので、借りてないから、借景ではなく遠景です!…と美術館の方は言ってましたよ(笑)。
また、近くに民家が建たないように、美術館周辺の土地も買っているそうです。(どうしても見えてしまう民家は木で隠してます。)徹底してますね!
安来節演芸館…足立美術館のすぐ近く(Pは共通)。安来節を実演してます。時間が合えば、おすすめ。楽しいです。ツアーで行くと、美術館に飽きたお父さんたちが、よく行きます😁
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