旅cafe

旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。

NHK 100分de名著 観阿見世阿弥 風姿花伝

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NHK 100分de名著
阿見世阿弥 風姿花伝 第1回 「珍しきが花」

阿見世阿弥っていうと1962年生まれのブログ管理人にとっては、歴史の教科書に名前が載っている程度しか認識がありません…皆さんもそうじゃないですかね。


世阿弥風姿花伝
日本が世界に誇る舞台芸術 ”能” 歌や舞で物語を演じる…いわば日本版ミュージカルです。

今から600年前、室町時代世阿弥という天才能楽師によって完成されました。風姿花伝はその世阿弥による日本最古の演劇論です。

「初心」
秘すれば花
など数々の名言が散りばめられ、現代の私たちにも人生のヒントを与えてくれます。常に可能性に挑み続けた世阿弥に迫ります。

明治大学教授 土屋恵一郎
「能というと敷居が高いと思われがちですが、当時は田舎でも都でも野外でもいろんな場所でやっています。弁当、酒などお土産を売っていまして、それを買って中に入って能を見る…今のお相撲と同じと考えればいいと思います…大衆芸能ですよ」

 

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室町時代の能とは…
風姿花伝の作者・世阿弥の時代、能は猿楽と呼ばれていました…猿楽にはいくつもの流派があり、世阿弥は大和猿楽という流派に属していました。

彼らが得意としたのが ”鬼能” 鬼に扮して地獄の恐ろしさを人々に伝えるものでお寺の祭りなどで演じる事が多かったといいます。

そんな大和猿楽を劇的に変えたのが世阿弥の父・観阿見でした…観阿見は歌や舞を積極的に取り入れて無骨だった大和猿楽を華やかなイメージに一新させたのです。

生まれ変わった観阿見の一座は爆発的な人気を博します…ついには将軍・足利義満に召抱えられるという破格の待遇にまで上り詰めます。

世阿弥はこの時12歳、美しく利発な少年でした…将軍を始め貴族たちは世阿弥の愛らしさに心を奪われ、一座の人気は益々高まります。

世阿弥は将軍や貴族から豊かな教養を学びました。それが世阿弥の脚本や演出に影響を与え、能を洗練された芸術へと高める事になるのです。

明治大学教授 土屋恵一郎
「… 世阿弥は将軍の側近的な立場にまでなっていたと考えられます…しかし流派というのはたくさんあって風姿花伝の中でも述べられていますが ”立ち会い” をしています。

立ち会いとは競い合いです。立ち会いに勝つか負けるかは大事でそのために世阿弥風姿花伝を書いたといってもいいと思います。中世の時代は和歌でも勝ち負けがありました…父の観阿見は勝ち続けた大天才だったのです。 


阿見の死によって
生まれた風姿花伝
世阿弥が22歳という若い時に父・観阿見が亡くなり、一座のリーダーとなります。観阿見は天才的大スターですがシステムは作っていません。

世阿弥が能のシステムを作って後の世代に引き継ぐ枠組みを作ったのです。世阿弥は、父・観阿見の教え、自分の研究を風姿花伝にまとめ上げたのです。 …」

花と言えば
四季折々の花がある
季節が変わって
咲く花であるからこそ
その花は珍しいものとなり
人々も喜ぶ

能も同じである
人にとって
珍しく新しいものであるからこそ
面白いと感じる

つまり
「花」と
「おもしろい」と
「珍しさ」は同じ事なのだ。
(『風姿花伝』より)

珍しきが花、観客にとって新鮮な事が花になるというのが世阿弥の考えでした。

住する所なきを
まず花と知るべし
(『風姿花伝』より)

住する所とは、同じところにとどまる事、それでは人を感動させる事は出来ない…常に変化を続け、新しさを取り入れた芸であってこそ人々に感動を与える事が出来る。世阿弥は徹底的に新しさにこだわりました。

明治大学教授 土屋恵一郎
「… 世阿弥は現代でいうところのイノベーション、革新をこの ”珍しき花” でいい尽くしているのです。

秋元康テリー伊藤はまさに世阿弥ですよ…常に新しいもの…たとえばAKBの初期の物はインドネシアで歌っている…インドネシアなら珍しい…AKBの初期の物はいろんな場所で歌っていれば新鮮さが持続される。…日本で何年か経って歌うと懐かしい…これを続けています。 …」

伊集院光
「不思議なのは能のありがたみが真逆にとらえられている…むしろ変わらない事がありがたみだ…伝統が受け継がれている事が…マンネリが素晴らしい…真逆の見かたになったのはなぜなのですか」

明治大学教授 土屋恵一郎
「… 実は能は同じ曲でも必ず何か新しい要素が加わっているのです…それは世阿弥の教えが生きていて ”何か変えよう” 装束、演出、登場の仕方など何か変えています。

自分の成功体験に囚われるな…模倣するな…常に更新しなさいと世阿弥風姿花伝の中で言っているのです。 …」


世阿弥イノベーション
風姿花伝の花、世阿弥の能の魅力とは 「花があってこその能だ」 という一語に尽きます。世阿弥は花、つまり感動を与えるために惜しみなくアイデアを投入します。

その一つが今でいう ”人気小説のドラマ化” でした。
平家物語
伊勢物語
源氏物語
など有名な文学作品を原作に世阿弥は次々と新作を書いてゆきます…この時、原作をドラマチックに見せるための技法として世阿弥は、 ”旅と夢” を使いました。

有名な文学作品の舞台へ旅をして…そこで夢を見るという仕組みで現在と過去、あの世とこの世を自由に行き来する物語を作ったのです。

当時としては画期的な手法でした…これが今日の能の原型となったのです。

伊集院光
「ようはハリーポッターのぶ厚い本が映画になる…映画になるとどうなるんだろうって事ですね」

明治大学教授 土屋恵一郎
「… つまり世阿弥がビジュアル革命をやったのです。現在で言えば文学のビジュアル化、ゲーム化です。

世阿弥が日本で初めて文字で書かれたものを声で語られてきたものを舞台にした…これは大革命だったのです。 …」

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司会 武内陶子
伊集院光
明治大学教授 土屋恵一郎