旅cafe

旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。

テロとの戦い 生物兵器の脅威に備える!

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NHK BS世界のドキュメンタリー
テロとの戦い 生物兵器の脅威に備える!

病原体、それは地球上で最も小さい生き物です。しかしその破壊力は甚大です・・過去何世紀にもわたって多くの人命を奪ってきました。

もし世界で最も殺傷力の強い伝染病がバイオテロとして使用されたら犯人の思惑通りに作用するでしょうか?・・そしていったいどんな事が起こるのでしょうか?

攻撃は夕方密かに始まります。
気配が街の中に流れ込んでも誰もその存在に気づきません・・風に乗って静かにそして目に見えず探知されない・・人々は息をするたびにそれを吸い込みます・・そして何日も経ってから攻撃された事に気づくのです。・・その時には既に大惨事になっているでしょう。

ペスト菌・たんそ菌・エボラ出血熱天然痘のウイルスなどは人類の歴史上、幾度も死神のように現れ何億もの人命を奪ってきました。

生物兵器は極めて小さく小さじ一杯の量で5兆個分にのぼります・・しかも生きていて自己増殖が可能です・・体内に侵入した量が少なくても人体は全面攻撃を受けます。しかし生物兵器が効果を上げる為には、私達の身体に備わっている防御システムを打ち破らなければなりません。

傷口に侵入するか呼吸や飲食により体内に取り込まれる事が必要なんです・・バイオテロ成功の可否は標的とした全ての人間に病原体を侵入させられるか否かにかかっています。

冷戦時代、アメリカと旧ソビエトは病原体を装填したミサイルや爆弾の研究開発に巨額の費用をつぎ込みました・・都市を丸ごと破壊する生物兵器でした。

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危険な微生物を大規模に培養して兵器化する仕事に多くの作業員が携わりました・・メロンぐらいの大きさの爆弾に装填して空中から投下するかミサイルに搭載する計画でした・・全面攻撃が行われた場合の死傷者は数百万人に上るでしょう。

しかしこれ程のハイテク兵器をテロリストが準備する事は不可能です・・しかし技術が無くとも試せる簡単な方法があります。

1.公共の水道
テロリストが水源をコレラやペストなどで汚染し都市全体を標的にする懸念です・・しかしこの計画には無理があります・・致死量という点から考えると微生物は少量でも危険ですが貯水池は広大です。大量の病原体を混入したとしても薄められます・・プラス浄水処理の工程で他の微生物とともに殺菌されてしまいます。

2.空気感染
空気感染は治療が困難です・・呼吸した時に病原体に気づく事は不可能、人間の肺は酸素を取り込みやすい構造なので空気感染には無防備です。

肺は他の臓器に比べて免疫力が弱く人体の中でも特別な場所です・・人に生物兵器を吸入させるには大気中に浮遊する微粒子状、エアロゾルになっていなければなりません・・それを実行する装置が農薬散布用の飛行機です・・アメリカ国内だけでも3000機以上。

しかし農薬散布用の飛行機に設置されている噴霧機は、粒子が粗すぎるのでバイオテロには役に立たないのです。


3.炭そ菌
実際にテロ目的で使用されて成果を上げた数少ない微生物が炭そ菌なのです・・炭そ菌は、皮膚の切り傷からも侵入しますがその場合、死に至ることはほとんどありません・・しかし肺からの吸入だと半数は死亡します。

ほとんどの微生物は繊細です。細菌は実に脆弱な生き物です・・太陽光線・熱・湿気などにより自然環境の中でさえ壊れてしまいます・・炭そ菌は自らカラの中に閉じこもり休眠状態になる事が出来るのです・・そして再び宿主の体内に入るのを待っているのです。

保護膜に包まれたままの炭そ菌を「芽胞」と呼びます・・芽胞は炭そ菌を何十年も元気な状態に保ちます。また芽胞としての形をとる事によって兵器としての魅力も増します。

空気中に散布された時、酸素にも太陽光線にも熱の変化にも影響を受けづ破壊されないのです・・たんそ菌が理想的な兵器と言われる所以です。

2001年10月アメリカで郵便物に炭素菌が封入され22人が感染しました。内10人が肺からの感染です・・郵便局員の感染では送風機により炭そ菌が舞い上がり肺から人体に侵入したのです。

肺に到達できる生物兵器のサイズは限定されています・・大き過ぎると気道の壁に引っかかりタンとともに排出されてしまいます・・逆に小さすぎると呼吸により吸引されても再び吐き出されてしまうのです・・しかし炭そ菌の微粒子は肺の奥深くまで侵入するのに理想的なサイズなのです。

※筆者も2001年当時、警備会社に勤務していましたので白い粉にきおつけよと言う指示を現場に出した事を思い出しました。

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4.ウイルス
アメリカの情報機関によれば、ある上院議員のオフィスで開封された炭そ菌入りの手紙には、2gの白い粉が封入されていました。一人の致死量の2000万倍を超える量です・・しかし誰も発病しませんでした。すぐに抗生物質を投与された為です。

炭そ菌のような生物兵器は生きている細菌です・・抗生物質は人間の細胞に影響を与えず外からの侵入者のみをターゲットにするのです・・生物兵器の攻撃を受けた直後に抗生物質を投与すれば犠牲者の数を大幅に減らす事が出来ます。

しかし抗生物質が効かない生物兵器が存在するのです。・・それは、ウイルスです。

ウイルスが厄介なのは私達の細胞を利用して増殖するからです・・ウイルスは細菌から人間の細胞にいたるまで標的にします・・上手く体内に入ったウイルスは宿主を破壊するまで自己複製を繰り返します。

そして何千という新しいウイルスの粒子は宿主を乗っ取ろうと体内に広がって行きます・・体内では免疫系が抗体を作って反撃します。しかし一部のウイルスに対しては治療法がまったく無い状態です。

専門家チームが特に強い懸念を抱いているのがエボラウイルスです・・エボラウイルスは感染者の臓器をドロドロに溶かし身体のあらゆる部分に出血を引き起こし、感染者の90%を死に至らしめます。・・現在の科学では防ぐ手立てが無いのです。

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1992年 オウム真理教麻原彰晃代表が40人の弟子を率いてザイールを訪れました。名目はエボラ出血熱の患者を支援すると言うものでしたがそれは違います・・彼らの目的は、テロ攻撃で使う為のエボラウイルスを採取する事だったのです。

オウム真理教はテロを実行する為の潤沢な資金を持っており、高度な知識を持つ科学者を擁していました・・それでも彼らのエボラウイルスによるテロの企みは失敗に終わりました。炭そ菌の製造、使用も何度か試みていたようですがそれも失敗しています。

生物兵器によるテロを断念した彼らは、計画を変更し化学兵器 サリン で東京の地下鉄を攻撃します・・恐ろしい事件でしたがもしオウム真理教エボラウイルスによるバイオテロを成功させていたら更に多くの被害を出していたでしょう。

ウイルスは感染者を死亡させるだけでなく感染した人が媒介となって新たな感染者を増やして行きます・・ウイルスは伝染性で爆発的に拡大して行きます。

バイオテロ最大の潜在的脅威は、伝染病を兵器として使用する事です・・連鎖反応で瞬く間に感染が広がって犠牲者の数は膨大になるのです。

長らく生物兵器として使われてきた一つのウイルスの歴史がその恐るべき潜在能力を証明しています・・天然痘です。

天然痘はとほうもない感染力を持っています・・ウイルスが感染すると40%は死に至ります・・20世紀だけでも世界で5億人が天然痘で死亡しました。

この2000年間に天然痘に感染して死亡、肢体不自由、失明など重い後遺症を負った人は10人に1人に上ります・・もし今、兵器として使用されたら封じ込めるのはほぼ不可能です。

人や物が早いスピードで国境を越え長距離を移動する時代に伝染病の拡大傾向を予想するのは極めて困難です。まして封じ込めなど不可能・・新型インフルエンザの例を見ても明らかです。

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新型インフルエンザの流行は、2009年4月メキシコで始まりました・・数日のうちにアメリカ合衆国、僅か1週間で20カ国からウイルスが検出され、1年後200を超える地域と国に広がり、死者は1万8000人に上りました。

天然痘のように致死率が極めて高いウイルスが散布されれば、はるかに深刻な事態になります・・伝染病を広めようとするテロリストは、それが限られたエリアにとどまらない事などおかまい無しでしょう。

しかしテロリストがどんなウイルスを使用するにしても再び壁にぶつかります・・ウイルスは自然界においてはとても脆弱です。宿主の外に出たら長くは生きられないのです・・この為、ウイルスを兵器化するのは至難の業なのです。

しかし自爆テロならウイルスの弱点を補う事が出来るのです・・つまり命知らずのテロリストが危険なウイルスを自分の体に宿し周りの人に移すのです。・・感染した体液などを介して宿主から別の宿主へウイルスが広げるのです。

人が多く集まるスタジアムなどの混み合った空間では伝染の可能性が更に広がります。

しかしこうした形の攻撃にも限界があります・・つまり多くの病気は発症してからでないと感染力が無いのです。・・死ぬ可能性のある病人があっちこっち動き回って病気を広めるだけの体力があるかどうか疑問です。

天然痘は、1970年代に世界的にワクチン導入プログラムが導入さた後、自然界から根絶されました・・現在、地球上で天然痘ウイルスが保管されているのは、アメリカとロシアの2カ所のみです・・これらが安全に保管されている限りテロリストが天然痘ウイルスを手にする事は無いでしょう。

しかしテクノロジーの進化によって危険な病原体を研究室で作りだす事が可能になってきたのです・・スペイン風邪は1918年、2500万人の命を奪いました・・近年研究者達がそのウイルスを蘇らせました。

病院に保管されていた標本や永久凍土から掘り返された遺体のDNAの断片をつなぎ合わせてウイルスを再生したのです・・別の研究者チームは、それが可能かを試す為、小児麻痺を引き起こすポリオウイルスを人工的に複製しました。

こうした試みは、バイオテクノロジーの分野が急速に進化するにつれ今後起こるかも知れないあらゆる可能性の始まりに過ぎません。

そう遠くない将来、ウイルスの入手方法は、ウイルスを作る事が最も簡単な入手方法になるでしょう・・一度、科学が遺伝コードを解読すればテロリストは今のコンピュータウイルスと同じぐらい簡単に病原体を作り出せるようになるかもしれません。

■・・・という希望的観測と将来の不安を最後にしてこのレポートを終わらせたいと思います。