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旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。…当ブログ記事は転載OK…リンクを貼っていただけるなら遠慮なくお好きにお使いください。

NHK 100分de名著「老子」

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NHK 100分de名著
老子」 第1回 「道」に従って行きよ

およそ2300年前に書かれた老子論語と共に中国の2大古典といわれる名著です。…時は春秋戦国時代、乱世を生き抜くために様々な思想が生まれました。

中でも時流に流されず、超然と生きる事を説いた老子、その教えは人や世の中が疲弊している時にこそ読むべき癒しの思想として今、注目をあびています。

道・Taoと名付けられた思想は宇宙の始まりから、人の生き方までが込められた壮大なスケールを持つもの…100分で名著、今回は老子の教えから今に生きるメッセージを読み解きます。

武内陶子
「文字数にするとほんの僅か5000字ぐらい。原稿用紙にすると12枚チョットなんですが素晴らしいご本らしいです」

今回の指南役の中国思想史が専門、東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生は、老子とは 『落ちこぼれのための思想』 社会が混迷に陥っている時こそ有効だと考えています。

 

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老子」とは何か?
・今から2300年ほど前の古代中国で書かれたもの『老子道徳経』とも言われる
・81章の格言集のようなものでストーリーはない
・作者老子は不明で伝説上の人物

一説によるとこの老子は聖書に次いで翻訳が多いと言われてもいます。

東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生
「東アジアで一番多いのは、『論語』これは異論がないところです。私は2番目が老子ではないかと思っています」

「知らず知らず日本人も老子の影響を受けていてたとえば『大器晩成』、『千里の道も一歩から』などは老子の言葉です」

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老子は紀元前5世紀、春秋と戦国時代の変わりめぐらいだったんですね

「そうですね…戦国になりますと鉄の生産が普及してきまして国力がグッと上がります。そういった国力を背景として諸国はお互いの国同士で戦いをした非常に熾烈な時代です」

身分制度や社会制度も大きく変わった時代だったんでしたね。

「鉄器に生産によって農業の生産力が高まりました。…その流れに乗って上手くいった国、人。…一方で実力主義だから落ちこぼれの人が出てきます…格差社会になって行くだけです…果てしない競争社会の中で生きにくさを感じる人が出てきたと…そういう人に老子は受けたわけです」

「コンピュータに置き換えれば、IT時代がくる事で世の中の序列がチョット変わるとか…IT時代のチャンスに恵まれて大金持ちになる人もいれば、…今まで持っていた技術が何の役にも立たなくなるような局面の人もいる…古代中国もそういう厳しい時代でした…厳しい時代だからこそ、様々な思想が生まれたのです」

論語』は得意のときに読め
老子』は失意のときに読め
老子ドロップアウトした人たちに受けたのです。


老子」は ”道”=TAO
についての書物…老子が説いた道とは
孔子とか孟子とかいう人が説いたような道徳の意味ではない。

物有り混成し
天地に先だちて生ず「25章」
(天地の始まりの時、影も形もない。このような状態を無と呼ぼう…無から天地が生まれ、天地から万物が生まれた…これを有と呼ぼう…無から有が生まれたのは、道のはたらきによるものである…つまり無と有は道によって存在する…道、それは万物創世の母であり、無限のエネルギーを持つものである)

道=
1.天地や宇宙を生み出す根源
2.万物造成のエネルギー
3.自然(おのずからしかり…誰に動かされる事無く、四季は巡るような…法則、摂理)

人は大地の営みに支配される
大地は天の営みに支配される
天は宇宙の法則である道に支配されている

つまり老子は、人の営みや自然現象は、偉大なる法則、道が司っており、それらはすべて自然、おのずとなっているものと考えたのです。


武内陶子
「先生、当時主流だったのは孔子儒教ですよね」

東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生
「一番有力な学派として儒家がありました」

 

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現代風ドラマ
老子先生の悩み相談室
孔子が説く儒教全盛の時代に老子はいったいどんな教えを説いていたのでしょうか?
ある日、こんな相談がありました。

女性事務員
「先生、今日も相談のお葉書きてますよ…」

老子先生
「どれどれ…漢の国の役人、S夫さん…いつの時代から来た手紙だ」

「私は、下級役人をやっているものです。猛勉強して入った役所で周囲に出遅れまいと今はやりの孔子先生が説いた儒教の教えを実践しています」

「ふーん…真面目な若者だな…でも時々その教えが窮屈に感じてしまう時があります。役所では上司に家では親に仁義忠孝を尽くすのでヘトヘトです。こんな事で疲れてしまう自分は間違っているのでしょうか、老子先生の教えを聞かせてください」

「うーん…頑張り過ぎて自分の事、苦しめちゃってるんだな…じゃS夫さんにこんな言葉を授けよう」

大道廃れて仁義有り
知恵出てて大偽有り
国家混乱して忠臣有り

女性事務員
「それどういう意味ですか?」

老子先生
「君は何にも知らんにだな…大いなる道が廃れたから仁義なんてものが説かれるようになったんだ。…頭を使うようになったから嘘とか偽りとかがまかり通るようになった。…国家が混乱したから忠臣なんてものが求められるようになったんだ。…形から入るとろくな事は無い、大事なものを見失ってしまうという事だ…孔子よりいいだろう」

女性事務員
「でも…孔子先生の本、今でもバカ売れらしいですよ」

老子先生
「え!…そうなの?…まあ、S夫さんにこの世で一番大事なのは、 ”形よりもこれ” というのを教えてしんぜよう」

無為自然…あるがままにあれということだよ」

 

あるがままに生きる
東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生
「たとえば親孝行、一口に言いますけど…朝起きたら親の顔を見て健康を判断する。夜が明ける前にします。そして身なりを整えて親にご飯を食べさせる。そういう形の孝行の仕方なんです」

「そういう細かい規定がありますからこん身がずれて行っている。形式化している。…対して老子はそういうもののない。そんな事を考える必要のない道の世界に帰りなさいと言ったわけです」

武内陶子
「先生…老子孔子に対してライバル心なんてあったんでしょうか?」

東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生
「批判していますね。とにかく儒家の思想に対しては批判しています。一番批判しているのは形式主義…形式というものは人間を豊かにするものではないと考えたんでしょうね」

「あるがままが道に従ったいきかたなんだ…ありもままの自分でいいんだということですね」

「生きているということを真正面から強調したのが老子。…みっともなくてもいいからとにかく生きるという事は一番大事だと 『生』の哲学です」

「世の中が上手くいってドンンドン発展して成長して力がみなぎってくるような時代ならいいですけど…そうでない時代は、やっぱりチョット立止まっていろんな事を根本的に考えてみようという老子の思想というのはそれなりに意味があると思います」

伊集院光
老子が落ちこぼれに愛されるる理由が少しだけ分かって来ました」

 

 

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NHK 100分de名著
老子」 第2回 水のように生きる

古代中国で生まれ、2300年に渡って読み継がれてきた老子、そこに書かれた教えは、いつの時代にも生きる事に悩む人たちに多くのヒントを与えてきました。…(大器晩成、柔よく剛を制す、和光同塵

中でもよく知られた教えが…『上善水のごとし』…水のように生きるというもの。

悩める現代の我々に、老子は何を教えてくれるのか…100で名著、今回は老子が説いた人との付き合い方を探ります。


「無為」 に生きる

『道は常に無為にして
而も為さざる無し』
道というのは何もしないで全ての事をなしてゆく。余計な事をしないで何もしないのが一番いいのだ。

今週の指南役の中国思想史が専門、東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生です。

東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生
『何もしない事を為す』とは、意図とか意志とかいわゆる ”作為” を全部否定したわけです。

伊集院光
「何もしなくていいよいうのは、学生時代の僕は家でズーット寝てました…ああいう事を云うのですか?」

『何もしない』という事は
『何もしない事を為す』という事とは違います。
積極的に何かをしようという事を否定しているわけで、ただの怠けるというのとは違うのです。

例を上げますと痩せよう、長生きしよう、偉くなろう、などは人間本来のものではないと老子は考えたのです。

伊集院光
「人よりもてたいとかも駄目ですか…それで何もしないのは簡単ではないな」

武内陶子
「あくせく働くなという事ですかね…2300年前の高級官僚とか時代を動かしていた人、作っていた人に向けてって事ですかね」

そうですね。特にそういう人は、こういう言葉を受け止めてほしいと思っていたでしょうね。

 

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『学を為す者は日に益し
道を為す者は日に損す』
学問をするものは、日々知識が増えてくる。更に勉強しなければいけなくなる。…しかし、道を修める者は日々に欲望が減って行く…余計な欲望がドンドン減って行ってもう何もしなくてよくなるところにたどり着くのだ。

同じような言葉で 『学を絶たば憂いなし』 という言葉があります。
学問とは、人が生きて行く上で無駄なものである。必要ないと老子は考えていたわけです。

武内陶子
老子は、学問と共に『達成感』、『顕示欲』、『嫉妬心』なども必要ないと言っております」

欲望、知識は生きる上で余計なものである。…付着したもの付着物ととらえています。

伊集院光
「先生…我々の仕事なんて顕示欲、達成感…これこそがエネルギーであって嫉妬心というのも当然…競争心が生まれて向上するじゃないかと思うんですか…余計なものなんですか」

そうですね。…頭の良さとか、知識の多さとかより『無為』が良いという考えです。…無為…いろんな付着物を捨てて行くわけですがそうすると赤ちゃんのような素朴な状態になるんです。

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生まれた時の汚染されていない、まっさらな状態こそ人間の本来あるべき姿だと考えたのが老子の教えです。

本来のありのままの自分=『無為自然』なのです。

赤子を理想化したのは、老子だけです…赤子じゃ世の中生きて行けないはずですが…ですが削ぎ落として行く事を主張するためにはここに戻るのが一番いいんだということです。

伊集院光
「極端な話、赤子だよということですよね」

その通りです。


『上善は水のごとし、水は善く万物を利して争わず
衆人の悪む所に処る、故に道にちかし』(8章)
徳のある人の生き方は、まるで水のようである
水は万物を育て養う
そして軟らかくしなやかだ

何時も自然に寄り添い
争う事も無ければ威張る事もない

水はいつも低い所へ流れて行く
徳のある人も人々の下に甘んずる

水は絶えず万物に施し
その見返りを求めない

水は万物をありのままに映し
嘘偽りがない

人間も水のように生きる事ができて
初めて道に近づく事ができる

これを『上善は水のごとし』という


水に学ぶ…これは老子の中で有名な言葉なんですが、老子は『柔弱』という事を言います。…軟らかくて弱いというのは、 ”しなやか” という意味です。

水というのは四角い器に入れれば四角くなるし、円い器に入れれば円くなると…状況に素直にそ通りに従う、柔軟なものの代表だということで、人の生き方と水とを関連して考えたのです。


『天下の至柔は天下の至堅を馳騁し
無有は無間に入る』(43章)
これは、世の中の最も柔らかいものは、最も堅い物を突き動かす。…柔らかいものが堅いものを動かしている。…無有、形の無いものは隙間がない物にも入って行けますよという事です。

柔道で有名な言葉、『柔よく剛を制す』 これも老子のことばです。

柔である水が…水ほど柔らかい物はないんだけど弱くて柔らかいんだけど、しかし堅くて強い物を動かしてゆく。

水ほど威力を発揮するものは無い。

どんな名人が切っても水は切れない
どんなに力を込めて打ったとしても水は壊れない
燃やそうとしても燃えません
どんな事をしても下の方に流れるという性質を変える事は出来ません

なぜかというと水というものは、自分の弱さに徹底しているからだという考え方なのです。


水の教えと同じような言葉があります
『曲がれば即ち全し』 その意味とは…
あれは役立たずの木だといわれる気がありました。…あの木で船を作るとすぐ沈むし、棺桶を作ると腐ってしまうし、道具を作るとすぐに壊れるし、柱にしても虫がわく、まったく使い道のない木だ…。

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しかし全く使い道のない木だからこそ大木になるまで切られずに長生きが出来た。…そして旅人に一時の休息を与える事も出来るのです。

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役に立たないからこそ役に立っている …今現在認められなくとも焦る事は無い。くよくよせずに自然体でありのままでいればいいんだという事なんです。

伊集院光
「バカも貫いて、貫いて、貫いて行けば賢いという事よりも強いというか」

そうですね…何かをする事に勇気があるか、しない事に勇気があるかという対立する発想はあって老子はあえてしない…ぐずぐずしている方を積極的にやりなさい。

勇ましく敵陣に真っ先に駆け込むような者は、真っ先に戦死するわけです…しかし、そうじゃなくて、ぐずぐずぐずぐずためらっていると…まあ、信念を持ってぐずぐずしているわけですが…そういう人がいいんだと…この厳しい時代に生き残れる。

ぐずぐずの方が生き残れる…だから不戦、戦わないというのが大事なんだ。

カッコ悪くても生きて行け
ぐずぐずしても生きて行け
”生き抜く思想” です。

伊集院光
「ハッっとさせられる人もいっぱいいたろうな…でも強烈に反発するひとも沢山いたんではないですか…モウレツ主義の人から見たら…なんて悪書なんだと思いますよね」

ありとあらゆる人に説得力のある本なんてありませんから…どんな本でもないです…あれな世の中とっくに平和になっています。

結局、老子の言いたい事は、 『弱さを貫け』 …弱さを貫くのはかえって強い…厳しい戦国の時代に何故か・・・。

一人一人の命がかけがえもなく大事と考えたところが今でも読まれる理由なんです。

伊集院光
「一番バカってのが一番頭が良いよりもいいんだよ…って言える優しさ、強さですね先生」

その通りです。

 

 

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NHK 100分de名著
老子」 第3回 人生を生かす知恵

不安や欲望に満ちた世界で我々はどのように生きるべきか…古代中国で誕生し、現代の私たちにも生きる指針を授けてくれる思想書孟子…その教えは元々、国を治める君主に向けて書かれたものでした。

争いや策略に明け暮れるリーダーたち…彼らに向って老子はどう収めよ、どう生きよと説いたのか…100分で名著、今回は老子の説いた人の活かし方、理想のリーダー像について読み解いて行きます。

 

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今週の指南役の中国思想史が専門、東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生です。

東京大学名誉教授、蜂屋邦夫先生
当時は戦国時代でどの国もどうしたら自分の国を存続させる事ができるか、どうしたらもっと強くなれるかというような事ばかりを考えていた時代ですから君主たちに説いた思想も国をどのように束ねていったらよいか…どうしたら国をよく治められるかという統治論でした。

そういう時代でしたから老子の教えの中にも統治論の要素があります。…ありますが…老子の統治論というのは、一風変わったというかかなり変わった統治論なんですね。


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絶え間なく領土を奪い合う争いが繰り広げられていた時代…老子は君主たちに次のように説いた。

大きな国とは川の下流のようなものである。
そこはあらゆる水が混じり合うように国々の力が交わるところ…たとえて言うなら女性のようなものだ。

一歩引いて静かにへりくだっている。
大きな国は小さな国にへりくだっていれば、その小さな国を配下におさめる事が出来、…小さな国もその大きな国にへりくだっていれば、大きな国に守ってもらう事が出来る。

そうする事で相手を従えられる場合もあれば、存在を認めてもらう事もある。
両者が望む事を実現しようとするなら、まず大きい者の方がへりくだるのがよいのだ。

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相手を支配するためにへりくだれという事ですから非常に戦略的な感じがいたしますよね。…しかしそれは、ただの権謀術ではなく、戦わじして勝つための手段であったという事です。

大きい国と小さい国が戦えば、当然大きな国が勝ちますけど…当時の戦争は直接の戦争ですから、どうしても大きな国にも損害が出ます。…ですから人々が戦死してしまうという事を避けて平和的に共存しようとしたのです。


老子の外交術
・将に之を歙(ちぢ)めんと欲すれば、 必ず固(しばら)く之を張る
・将に之を弱めんと欲すれば、必ず固く之を強くす
・将に之を廃せんと欲すれば、必ず固く之を興(おこ)す
・将に之を奪わんと欲すれば、必ず固く之に与う
(第36章)

相手の国を縮めようとするなら、相手のくのをしばらく拡張してやれ
弱めようとするなら、強めてやれ
廃止しようと思うなら、それを起こしてやれ
奪おうと思うなら、しばらく存続させてやれ
というような自分のやりたい事と反対の事をやって…目的とする事のまず逆をやってみろと。

非常にトリッキー… ”権謀術数” そのものです。
油断させるわけです。相手を油断させて増長させて、そこを狙って攻める。

 

老子先生の
お悩み相談室

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お客
「すいません。こちらで老子先生に悩みを聞いてもらえると聞いてきたんですが」

女性事務員
「はい、こちらでお待ちください。…先生、お客さんですよ」

老子先生
「何かお悩みかな」

お客
「私、メーカーの営業部で働いているサラリーマンなんですが…自分で言うのもなんですが、バリバリやってきまして同期の中で一番初めに管理職になりました。いい部長になってやろうと張り切って働いてきたつもりです。でも最近部下たちが次ぎ次ぎと辞めていくんです。休職して戻って来ない者もいます」

「私、影でパワハラ上司っていわれているようで、こうなると社内の評価も下がる一方ですし、売上も下がるしでさんざんです。まいにち胃が痛くて…老子先生、いったいどうしたらいい上司になれるんでしょうか」

理牛先生
「それはお気の毒に」

お客
「ですよね…こんな事なら出世しなくても良かったんじゃないかって」

老子先生
「あんたの事を気の毒と言ってるんじゃないんだ、部下の事を気の毒と言ってるんだよ。…あんたこんな言葉を知ってるか…『大国を治むるは、小鮮を煮るがごとし』 鍋で小魚を煮る時に箸でつついたりすると煮崩れしてしまう、国を治めるにも君主はことさらなにもしない方がいいって事だ」

お客
「私は、部下をサポートするために毎日遅くまで一緒になって働きまして…」

老子先生
「だからそれが駄目なんだ…とにかく、いるかいないかわからんような上司を目指しなさい」

お客
「いつかいないかわからない上司って…それって幽霊部長とか言われませんかね」

老子先生
「あんた部下の事より、結局、自分の事ばかり考えている…上に立つ者は無為の立場を守らなければならん 『無為而治』 無為をして治める」

女性事務員
「先生、また無為ですか…なんかワンパターン」

老子先生
「ワンパターンでもこれでいいんじゃ…」

…『大国を治むるは、
小鮮を煮るがごとし』(第60章)
無為の政治です。…法律をやたらに出したり、ああせいこうせいと民にやたらに命令を下したり、税金を上げたり、という事をしない…ようするに人民に干渉しないという政治を言ってるんです。

リーダーランキング
1位 部下から存在する事しか意識されていない人
2位 部下から敬愛される人
3位 部下から恐れられる人
4位 部下からバカにされる人

忘れられているようなリーダーが一番ですと老子は言っています。…幽霊部長でいいのです。
立派な指導者というのは言葉を軽々しく発しないのです。

弁解をしたり、宣伝をしたりという事を一切しない…上げた成果が上司の働きであると意識されないというのが素晴らしいリーダー、理想のリーダーであるというのが老子の考え方。

ようするにこれは部下の自主性を尊重する思想です。


その政悶悶たれば その民淳淳たり
その政、悶悶たれば その民淳淳たり
その政、察察たれば その民欠欠たり
ここをもって聖人は、方にして割かず、廉にしてキらず
直にして肆(ノ)びず、光りて耀かず
(第58章)

悶悶…、政治が大まかでボーッとしているならば、人民は純朴で素直である。
察察…、細かいところまで行き届くと民は狡猾になり、ずる賢くなる。

聖人=リーダー
・自分は正しくとも、人をつけない
・切れ味鋭い性質でも、人を突き刺さない
・自分はまっすぐでも、それを押し通さない
・知恵があっても、それを人に誇らない

これこそ無為にして治めるという事です。
自分はやらないで部下の状況を見ているという事です。

老子の説いた聖人、つまり君主の有り方には全宇宙を司る、道の思想が反映されています。
天は強いる事もひけらかす事もなく、万物に恵みを与えている。

同じく聖人も力をひけらかす事無く、人々を導くべきだと老子は考えていたのです。


■いやー深い…だてに2300年も読み継がれてきてませんね。

 

 

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NHK 100分de名著
老子」 第4回 最終話 満ち足りた人生とは

人が人生に絶望した時に響いてくるといわれる老子、Tao道の思想…今、密かなブームになっている背景には一人一人が社会に生きにくさを感じているからかも知れません。

詩人のドリアン助川さんは人生の様々な局面で老子の言葉に支えられてきたと言います。…100分で毛著、老子、生きる上で一番大切なものを見つけます。

 

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伊集院光
「なんで老子バカボンのパパとからめたんですか?」

作家・詩人 ドリアン助川
老子を読んだ時、共感、シンパシーを持ちました。自分は社会から外れた存在だと…老子も見事に当時の社会から外れた人なんです。…単に外れているだけではなくて、社会なんかより遥かに大きなものと身を重ね合わせた…だから外れて行くんだという部分がバカボンのパパと一緒だと気がついたんです」

老子バカボンのパパの言葉で考えたら本当にシックリ入ってくるようになって…赤塚さん老子読んでるのかなと思いました」


バカボンのパパ語訳 老子の教え
・バカをつらぬくのだ!
・赤ちゃんは最強なのだ!
・へりくだって偉くなるのだ!
・近道は間違う道なのだ!
・なるようになるのだ!
・まっすぐな人はブレナイのだ!
… ”これでいいのだ!”

作家・詩人 ドリアン助川
「結局。『Tao・道』というのは、目に見えているところ見えないところを含めて大自然のリズムと呼吸を合わせて行く事ですから社会とは相いれない事も起きます」

武内陶子
「蜂屋先生、老子バカボンのパパということでよろしいのでしょうか」

東京大学名誉教授 蜂屋邦夫
老子も社会からドロップアウトした人ですから、通ずるところはあります」

伊集院光
「当時の世間のトレンドからすると逆の事を言うわけだから、トレンドの教えを利巧とするならば、バカな事を言いだしている人、真逆な事を言っている人が老子だから…紙一重なのがバカボンのパパだから老子とつながるのは当然ですね」

”無理は無理なのだ!”

跂つまだつ者ものは立たたず、跨またぐ者ものは行ゆかず。
自みずから見る者は明あきらかならず、自誇る者は彰われず。
自ら誇る者は功無く、自ら誇る者は長しからず。
其の道在るや、余食、贅行と曰う。
物或いは之を悪む。故に有道者は処らず。
(第24章)

バカボンのパパ語訳…無理は無駄なのだ!(第24章)
爪先立ちで立とうとする人は、
ずっと立っていられないのだ。

バカ歩きの大股で急ぐ人は
遠くまで歩いてゆけないのだ。

自分が見ている世界が
全てだと思っている人は
物事の本質が見えないのだ。

自分がやった事を
どうだ参ったかと自慢するような人は
何も成し遂げられないのだ。

そういう振る舞いは
TAOの今境地からすると
すごく無駄なことなのだ。
ざまあみろなのだ。

TAOを身に付けた人は
こういう事をしないのだ。
これでいいのだ。

東京大学名誉教授 蜂屋邦夫
「今のバカボンのパパ風の訳を一言でいいますと 『この訳でいいのだ!』 と言えます」

武内陶子
「蜂屋先生からのお墨付きがでました…笑)」

東京大学名誉教授 蜂屋邦夫
「24章は見せかけの行為はするな…我々がどうしても自分を大きく見せたい、そういう気持ちがあるわけですけど、そういう事は良くないですよという教えです。自然な歩幅で行くのが一番効率がいいのです」


・曲がれば則ち全く(木は曲がる事によって伐採されずに天寿をまっとうできる)
・かがまれば則ち直く(シャク取り虫はかがむ事によって身を伸ばす)
・窪かれば則ち満ち(土地は窪を作る事によって水をため)
・破るれば則ち新たなり(服は破れる事によって新調する)
・少なければ則ち得(少なければ得られる)
・多ければ則ち惑う(多いと迷う)
『第22章』

東京大学名誉教授 蜂屋邦夫
「欲望が無くなった時代はありません。2300年前の老子の時代も欲望を持ったがためにその国は滅んでしまった。…君主が下手な欲望を持つと国が滅んでしまう…掃いて捨てるほどそういう事例があったわけです。…そういうものを見ていますから老子は欲望が少ない方がいいのだと考えたのです」

 

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老子先生の
お悩み相談…足りる事を知る

女性事務員
老子先生、こんな狭くてボロイ事務所じゃなくて広い所へ引っ越しましょうよ」

老子先生
「バカモン!…君はこういう言葉を知ってるか…『足るを知らば辱かしめられず。止まるを知らば危うからず』 …今持っているもので満足するのが一番、バブルの時代を忘れたか欲望が膨らんだら際限がないのだぞ」

女性事務員
「そんなの覚えていますよ」

老子先生
「分相応という言葉を知っていれば、わしみたいに長く活躍できるんだ」

女性事務員
「長生きしたくないし…(ボソッ)」

老子先生
「聞こえてるよ」


足るを知らば辱かしめられず、止まるを知らばあやうからず
以て長久なる可し
(第44章)

東京大学名誉教授 蜂屋邦夫
「人間にとって何が一番大事なのかというと…分相応の暮らしに満足すれば、結果的に天寿をまっとうできますよ、長く活躍できますよと言っています」

 

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老子先生の
お悩み相談…第二部

部下の女性事務員が泣いている…

老子先生
「どうしたんだい…」

女性事務員
老子先生、私、今まで一度も失恋した事がなかったんです。でも昨日、彼が別れてくれって…うえ~ん…」

老子先生
「そうか、ふられたか…良かったじゃないか」

女性事務員
「先生ひどい…なにがいいんですか…こんな儲からない事務所で働いているからせめて結婚ぐくらいはまともな人とって…一生懸命尽くしてきたのに…うえ~ん…」

老子先生
「お前さん、この言葉を知ってるか 『わざわいは福のよるところ。福はわざわいの伏すところ、誰かその極みを知らん』 …災いには幸せが寄り添っていて、幸せには災いが潜んでるんだよ。今不幸でも結果的に幸せになる事もあるんだよ…今は思う存分泣きなさい」

女性事務員
「あーん…うえ~ん…」


不幸と幸せ

伊集院光
「これは受け売りなんですけど…人生の目標は何ですかと聞かれると『身のほどを知る』…身のほどを知る事だと答えるようにしています…人が言ってるのを聞いて受け売りしてたんだけど…そういう事かな」

作家・詩人 ドリアン助川
「だから…大自然は、伊集院さんに ”しゃべる” という才能を与えたんだから」

伊集院光
「なのに俺が踊りたいというとおかしな話になるわけですね」

作家・詩人 ドリアン助川
「伊集院さんが踊るのは 『無為自然』 じゃない」

伊集院光
「我が道ということも…我が道だと思い込んでいる他人の道が割と多くて…」

作家・詩人 ドリアン助川
「人の道を歩きたがるんです…人間とは…」

伊集院光
「本当の我が道を本当のペースで歩かなきゃいけないんですね」

武内陶子
老子の教えは年を取ってくるとしみてきますね」

東京大学名誉教授 蜂屋邦夫
「何年もいろんな体験があって、成功もあれば挫折もある、そのあげくにやっとわかってくるという側面もありますね」

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武内陶子
「この老子という人は、厳しく世を批判してきた人なんですが…老子全81章の中に一ヶ所だけ、”人間老子” を現しているところがあるんですか…ドリアンさん」

作家・詩人 ドリアン助川
「これを読んだ時は、居酒屋でも誘って焼き鳥つまみに酒でも飲みたいと思いました」

学ぶ事をやめれば悩みも無くなるのだろう
そもそも善と悪とでどれほど違いがあるのだろうか

他人が恐れるからといって自分も恐れるとは
何と道の心理から遠い事だろう

春になると人々は喜んで宴席のご馳走を囲む
たた私だけが淋しげで心の内を見せる事がない
一人孤独でどこにも帰属せず漂っている

誰にでも財産があるのに私だけが貧しい
人々は活き活きしているのに私だけが一人悶悶としている

まるでその心は波のように絶え間なく揺れているようだ
ただ私には尊い支えがある
それは母なる道に見守られているという事


東京大学名誉教授 蜂屋邦夫
「我々は道を通して宇宙につながっている…我々の存在は小さいけど、道というものによって宇宙並みに大きくなれる、大きいものであるという発想がありますから、自分は小さいと思って落ち込む必要はゼンゼン無い…これは老子が示す大きなメッセージです」

「ですからいろんな生き方があっていい…一つの生き方で限定されることはない…この生き方で行き詰ったら終わりじゃなくて、もう一つの別の選択肢があるという可能性を広げてくれる」

伊集院光
「蜂屋先生は、第一回で 『落ちこぼれのために老子はある』 と言いましたが…つまり老子を欲さない時に読まなくていいということなんですね。…なんか外れちゃった時に…違うんだよ外れたんじゃないんだよ『Tao・道』の方に近づいているんだよといってくれた」

「そして最後で… 『俺も寂しいっちゃ寂しいんだけどね』 と言ってくれる優しさなんですね」