旅cafe

旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。

ヒューマン なぜ人間になれたのか 旅はアフリカから始まった

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NHKスペシャル ヒューマン 第1集
なぜ人間になれたのか 旅はアフリカからはじまった

今、人間を解き明かそうという取り組みが様々な分野で進められています。

私たちの脳の中に答えを探す研究、脳科学…他の生き物と比べる事で人間だけの特徴を探す研究、動物学…そして私たちの祖先の足取りを追う研究、考古学…最先端研究の大きなテーマの一つは、あなた自身です。

人類発祥の地、アフリカ…最新の研究から祖先は、この大地で厳しい環境変動に翻弄されていた事もわかって来ました…なぜ生きのびられたのでしょうか?

そのカギは、人間だけが進化させたもの…特殊な協力行動でした。…人類20万年をたどる、壮大な旅の始まりです。


人類発祥の地
アフリカ

我々はホモサピエンス、地球上に誕生したのは20万年前、その当時と外見の見た目は、今とほとんど同じだったらしい。

20万年の歴史の実に4分の3、私たちの祖先はアフリカ大陸だけで生きていました…南アフリカ喜望峰から東に300キロ、ブロンボス洞窟に今、世界中の研究者の視線が集まっています。

他の生き物と違う祖先の最も古い証拠が10万年前の地層から発見されました…。

ノルウェー ベルゲン大学(考古学)クリストファー・ヘンシルウッド博士
「酸化鉄を含む石、削られています…絵の具に使ったのです。他にも穴の開いた巻貝の貝殻が大量に…絵の具は、お化粧に、巻貝の貝殻は僅か1センチ、規則正しく穴があけられている…人類最古の首飾りです」

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10万年前の遥か昔、祖先が始めていた他の生き物と違う暮らし、お洒落、しかしお洒落は、違う意味で使われていたのです。…ヒントは現代カラハリ砂漠で遠い祖先と似た暮らしを今も守っているマハマシ村、サンの人々です。

彼らの首には、首飾りが…首飾りを作るのは大事な日課の一つ、しかし、それは自分を飾るものではありません。

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老婆は、今付けている首飾りも自分で作ったものではないというのです。

老婆:「これは娘から、こっちは義理の娘からのもの…沢山の首飾りをしている人は仲間が多いのです…いつでも助けてもらえるのです」

生後3カ月を過ぎると初めての首飾りをもらえるのです…首飾りをプレゼントする、それは共に生きて行こうとする証なのです。

10万年前の地層から見つかったお洒落の道具、同じ化粧をして、同じ仲間だと確かめ合い、首飾りを贈ってその絆を強める。…お洒落は、当時の人々が仲間を大切に生きていた証拠だったのです。


動物実験
人間とチンパンジーの協力行動の違い

チンパンジーも仲間で暮らします…人間とどう違うのか…なぜチンパンジーなのかと言いますと人間に一番近い、共通の祖先から分かれたからです。

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枝分かれしたのはホモサピエンス(人類)誕生の遥か前、旧人、原人、猿人とさかのぼって700万年前の事です。…チンパンジーと人間は、今でさえ遺伝子は1%しか違いません。

チンパンジーの協力行動を調べました。
同じ群れのチンパンジーを隣り合った透明なガラスでできた部屋に入れ、一方(プチ)の少し離れた場所にご馳走を起きます…でも手を伸ばしても届きません。

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お隣のチンパンジー(マリ)の部屋にはステッキを置いています。…部屋の間には窓があり、物のやり取りが出来ます。

1.プチは手を伸ばすが届きません
2.マリはその様子をステッキを持って見ています
3.プチは諦めてマリを見つめます
4.しかしマリは、ステッキを持って知らんぷり
5.プチはマリに「そのステッキを貸して」と手を差し出します
4.マリは、どうぞどうぞとステッキを渡します
5.プチは、ステッキでご馳走を手繰り寄せます
6.プチは、マリが見ている前で一人でご馳走を食べてしまいました

ところが話は、これでは終わりません…数日後、まったく同じ実験を行います。

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前回と同様、プチがステッキを見つめてもマリは、知らん顔…

京都大学霊長類研究所 松沢哲郎 博士
「明らかに ”それちょうだい” と言えば渡す。そう言われない限り、なにも気づかないかのようにね…わかってるんだからあげればいいじゃないと思うんですが…しないんです」

でもそれって、前の実験でステッキを貸してもらったのに、ご馳走を一人で食べてしまったからじゃないの?…いいえ、2度目の時もプチが手を差し出すとマリは、あっさりとステッキを渡したのです。

京都大学霊長類研究所 松沢哲郎 博士
「相手の状況もわかっている…しかし、要求されない限り、相手を自発的に助ける事をチンパンジーはしないのです」


人類が
仲間を大切にする理由

自ら協力しないチンパンジー…しかし、私たちって自ら自発的に協力しますよね。…700万年前に分かれた人類とチンパンジーは、どうしてこのような差が出来てしまったのでしょうか?

…違いは骨盤です。

二足歩行の人類は骨盤の形です…骨盤は産道、赤ちゃんの通り道の形、大きさを決めます…人間の出産は難産、他人の協力が必要なのです…これは他の動物にない人間だけの特徴です…助け合わなければ生き延びられないのです。

産道が狭いため小さく生まれた人間は、成長するまで時間がかかります…手助けの内容も子どもの成長と共に変わります。…時には、年長者が先回りして助ける事も必要です。

こうして私たちは、自発的に助け合う習慣を広く共有するようになったのです。


人類の才能
コミュニケーション力

人類には誰でも協力する仕組みが備わっているのです…7年以上に及んだイラク戦争の現場で不思議な出来事がありました。

2003年4月3日、アメリカ軍が和平交渉を進めるため地元の宗教指導者を訪れた時の事です。…宗教指導者を捕まえに来たと勘違いした住民がアメリカ軍を取り囲んだ。

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言葉も通じない…その時、アメリカ軍司令官は、思いもよらない指示を出した。

笑うんだ!

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一変した空気…住民は、アメリカ軍に敵意が無い事をすぐに理解し、流血の惨事は免れたのです。

クリストファー・ヒューズ大佐
「私は世界の89ヶ国に行ってますが言葉の壁があっても笑顔が通じなかった事はありません…あの時も誤解されない方法は、笑顔しかないととっさに思ったのです」


人類が乗り越えた
気候の大変動

他人との協力なしには、生き残る事が出来ない…そんな危機が私たち祖先を襲いました。…7万4000年前、人類がアフリカを脱出して世界中に広がる1万年前のことです。

遺伝子の調査からアフリカの人口は、2万人だったと推定されています…その祖先が突如、絶滅の淵に立たされました。…寒さが襲い、食糧が極端に減ったのです。

「いったい何が起こってるのか」…私たち祖先は、知るよしもありません。

発端は、インドネシアスマトラ島、トバ火山が噴火したのです…噴火は次々と拡大し、長さ100キロ、幅30キロ、過去10万年間で最大の超巨大噴火でした。

火山噴出物は、10日間で地球を1周、日の光が遮られ、地球全体の気温が低下し始めます…噴火から2年も経たずに地球の平均気温は、12度も低下しました。…火山の冬と呼ばれる現象です。

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まず植物が無くなります…それを食べていた動物が姿を消し、祖先たちの食料も底をついたのです…それは劇的な変化でした。

人類も大きく数を減らします。

厳しい飢餓の時代は、2年以上も続きました…彼らは、食糧を求めて必死にさ迷い続けた事でしょう…その時、出会った人が見ず知らずの人であった場合もあったはずです。…一度や二度なら勝ち残ったかもしれません。

しかし、そんな争いをしていたら結局追い詰まられたのではないでしょうか…危機の時代、独占せずに互いに助け合った人たちが結果的に生き残ったと考えられます。

逆に血のつながらない見ず知らずの人と分かち合った方が生き残ったのではないか。

そのように分かち合った人たちがやがて世界中へと広がって行った。

果たして本当にそうだったのでしょうか?


世界中で行われた
分かち合い実験

世界中の研究機関が一つの実験を行いました…それは、お金を使った心理実験、…伝統的な生活を続ける人々から、農村、漁村、都市部など世界中の15の場所で同時に行われました。

ケンブリッジ大学(人類学) フランク・マーロー博士
「このゲームは単純です。あなたがプレーヤーの一人です…他にもう一人、あなたの知らない人がいると考えてください…相手もあなたの事をしりません」

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「あなたはこの10ドル札をあなたがどれだけとって、どれだけ、あげるかを決める事が出来ます」

あなたの目の前のお金、それをまったく見ず知らずの人にどれだけあげるか…もちろん全部自分で取っても構いません。…その結果は、誰にも知られず人の眼を気にする必要はありません。

アメリカでは、自分が53%をとり、相手に47%をあげるという結果でした。…15の場所全てで見知らぬ人に分けないところはなく、少なくとも20%はあげるという結果になりました。

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ケンブリッジ大学(人類学) フランク・マーロー博士
「この実験は、人間の本心が現れます…世界中で共通した傾向が見えたのです。…縁もゆかりもない人に対して分かち合わなければいけないという気持ちを、程度の差こそあれ、現代人は心に秘めているのです…アフリカで培った分かち合いの心を携えて、人類は世界中に拡散していったのです」

同じ実験は、日本でも行われました…56対44、見ず知らずの人とも分かち合う心、それは私たちにも受け継がれているのです。

いつも出来るわけじゃないけれど
誰とでも出来るわけじゃないけれど
少なくとも人間以外は
まったく出来ない

その尊さを
僕たちはどう守って行くのだろう


「幼児の精神的な病気」
戦後すぐにアメリカで発表された記録

親のいない幼児を育てる施設で、ある調査が行われた…91人の赤ちゃんを調べたところ、2歳になるまでに37%、実に3人に1人が命を落としていた。

最も重要な栄養と衛生環境は満たされていた…他に何かかけているものがある…調査の結果見えてきたのは、コミュニケーションの欠如だった。

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幼児に対する話しかけは、ほとんど行われず、子どもは一人ぼっちだったのだ…心を分かち合う交流が無ければ、人は生きて行けないという事なのか。

僕たちが持って生まれる力は
僕たちを助ける一方で
厄介な事も引き起こすのだ。

分かち合う心が断たれ
病に陥るのは、子どもだけではない。

一人ぼっちにされると
悩んでしまうのが人間

けれど電話の向こう
見ず知らずの人を助けられるのも
人間だ…。