NHK サイエンスZERO
特報! 旧石器時代の人骨 大量発掘
『白保竿根田原洞穴遺跡』
日本で旧石器時代の遺跡が見つかった場所は、日本全域に渡っており、1万ヶ所以上です。しかし不思議な事に人骨の化石は出てこないんです。
そこで大発見、沖縄・石垣島で旧石器時代の人骨が大量発見されたのです。
『白保竿根田原洞穴遺跡』(しらほさおねたばるどうけついせき)、今年開港した新石垣空港の滑走路の真横にあります。
空港建設に伴う調査で人骨が出てきちゃったんです…4年前から人類学、考古学の専門家など多くの人たちによって綿密な調査が行われています。
国立科学博物館 人類研究部 海部洋介
「… これは大発見です…2010年の発掘の概要だけで20個体以上確認されています。東アジアでもこれだけ大量に旧石器時代の人骨が出ている場所は他にありません。
東アジアどころか、東南アジア、シベリアでもありません…本当に重要な大変稀な遺跡が見つかったという事です。古いもので2万年前まで遡る事がわかっています。…」
骨は語る!
旧石器人の意外な生活
バラバラになった大量の人骨をつなぎ合わせる作業が今進められています。
(大腿骨が骨盤と組み合わさる部分の骨)
(本来は丸い骨の根元が窪んでいるのです…強い衝撃でダメージを受けたのです)
人類学者 土肥直美
「高い崖とかから落っこちてしまった…かなりの重傷です。しばらく歩けなかったかも知れません」
(注目すべきは、ここ…窪んだ部分を覆うように骨が張り出してきています)
人類学者 土肥直美
「… 打撃を受けたところに骨が頑張って再生・形成されたのです。つまりこんなに大怪我をしたのにこの人物は、その後も長生きしたのです。
このくらいの怪我になると、完全に自由に歩けません…狩猟採集生活をしているはずなので走れないということはかなり生活が不自由だったのです。
しかし、ちゃんと集団の一員として怪我の後も生活出来ていた…この事で旧石器時代の人たちも ”支え合う社会の仕組み” を持っていた事がわかるのです。…」
その他に歯石の付いた歯、虫歯なども見つかっており、旧石器人の食生活などの研究も進んでいます。
なぜ沖縄?
人骨大量発掘の真相
実は日本で旧石器時代の人骨が見つかったのは、静岡県と石垣を含む6ヶ所、…つまり全国で7ヶ所しか見つかっていないのです。
骨の主な成分はリン酸カルシウム、酸に溶けやすいのです…日本の土壌は酸性、だから土に眠った骨は溶けてしまうのです。
ところが沖縄には土壌の酸を和らげる琉球石灰岩があるのです。実は琉球石灰岩=サンゴなのです。サンゴ礁が堆積してできたのが琉球石灰岩なのです。
これにより土壌がアルカリ性を保ち、旧石器時代の骨が沖縄で多く見つかっているのです。
国立科学博物館 人類研究部 海部洋介
「… 縄文人の骨は全国で見つかっていますが貝塚から見つかっています…貝殻には炭酸カルシウムが含まれていまして土壌にアルカリ性を供給する源になっています。
謎に満ちた旧石器人
研究者たちの情熱がついに
…その実像を浮き彫りにしようとしています