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ダークマターの謎に挑む~暗黒物質 科学者たちの格闘~

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NHK コズミックフロント
ダークマターの謎に挑む~暗黒物質 科学者たちの格闘~

東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設・・岐阜県奥飛騨の山中、地下1000mに作られた研究施設です。

かつて鉱山として使われていたトンネルを車で進むこと5分、そこには巨大な観測装置が待っていました・・この春から本格的に稼働し始めたXNASS観測装置・・Xは謎、MASSは質量、重さを意味しています。

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これまで人類が誰も正体をつかんだ事が無い未知の物質、ダークマター暗黒物質)をとらえようと言うのです・・装置の心臓部は直径1mの球体、中にはダークマターが生み出す微かな光をとらえる特殊なセンサーが並んでいます。

宇宙の存在のカギを握るといわれるダークマター・・その存在を科学者たちが確信するようになったのは今世紀に入ってからの事でした。

東京大学宇宙線研究所 鈴木洋一郎 教授
「我々自身もこのダークマターがなければ存在していないほど重要なものなんですが、あると言う事はわかっているのですが、それが何なのかわからないのです」

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これまで科学者たちは私達の身の回りのものから夜空に浮かぶ星星に至るまで全ての物質は原子や分子などから形作られると信じてきました・・ところが様々な観測データによって原子や分子とは異なる得体の知れない謎の物質の存在が明らかになってきたのです。

しかもその量が尋常ではありません・・私達の周りにも普通の物質の5倍以上のダークマターが存在しているのです・・しかし私達はそれを決して見たり触れたり出来ないのです。・・今、世界各地で科学者たちによる熾烈なダークマター発見競争が繰り広げられています。


欧州原子核研究機構(OERN)スイス・ジュネーブ
ヨーロッパでは宇宙誕生直後の高エネルギーの状態を再現してダークマターの正体を暴こうとしています。

ワシントン大学 アメリカ・シアトル
一方、アメリカではダークマターが微弱な電波に変化するはずだと考えた研究チームがその姿をとらえる実験を開始しました。

ワシントン大学 レズリー・ローゼンバーグ教授
「まるで乾草の中から針を見つけ出すように困難です・・もしダークマターを発見できれば科学の新しい扉を開く事になるでしょう」

見えない謎の物質ダークマター・・科学者たちはその存在にどうやって気付いたのか・・その正体をどのようにつき止めようとしているのかを解説します。

たとえば私達は空気を見る事は出来ませんがその正体が何であるかを知っています・・ところがダークマターは、我々の身の回りのあらゆるところに存在している事はわかってきたもののその正体を掴んだ科学者は誰もいません。

この宇宙にある全ての物質の実に85%が謎の物質ダークマターだと言うのです。

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東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設・・ここ奥飛騨の地下の観測施設は謎の物質ダークマターを世界で初めてとらえるために作られました。

それにしてもなぜダークマターを1000mの地下でとらえようとしているのか・・それは分厚い岩盤で遮られた地下であればダークマター以外の物質が観測装置に与える影響を抑える事が出来るからです。

東京大学の鈴木洋一郎教授は、この観測施設は宇宙の謎を解明する地下の天文台だと言っています。

東京大学宇宙線研究所 鈴木洋一郎 教授
「地下のこの周りにも沢山あります・・1㎥当たり3000個ぐらいあります・・それが毎秒270キロで飛んで我々の身体を突き抜けているわけです・・ダークマターの風の中に立っているというイメージでしょうか」

鈴木教授をはじめ多くの科学者たちは、ここ数年ダークマターの正体は、超対称性粒子という未発見の素粒子だろうと考えるようになっています。

しかし様々な候補の中からダークマターの正体を超対称性粒子まで絞り込むには、長い紆余曲折の歴史がありました。

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Front1 宇宙に漂う未知の物質

カーネギー科学研究所 ベラ・ルービン博士の研究がダークマターの存在を明らかにしたのです・・ルービン博士の研究テーマは、アンドロメダ銀河の星々の動く速さを測定する事でした。

ルービン博士は銀河の星のスピードを丹念に調べていったのです・・その過程でルービン博士は予想外の結論に行き着きます。

星のスピードが予測されていたより遥かに早い事がわかったのです・・速いスピードで動いている星がなぜ銀河から飛び出さないのか・・銀河の中心に星をつなぎ止めておくだけの強い重力の源の何かが存在しなければ説明がつかないのです。

カーネギー科学研究所 ベラ・ルービン博士
「そこには目に見える物質より遥かに重い見えない物質があるはずでした信じられないほど大量に・・簡単な計算でわかりました」

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1970年 ベラ・ルービン博士の論文「アンドロメダ銀河の回転」がダークマターの存在を初めて世界に印象付けたのです。

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ところが目に見えない物質が銀河の中に大量に存在するという主張は周囲の科学者からの猛烈な批判にさらされる事になりました。

カーネギー科学研究所 ベラ・ルービン博士
「学会の反応はもう大変でした・・誰も私の主張を信じませんでした・・ある有名な天文学者は私をつかまえて私の主張がいかに間違っているか一晩中語り続けました」

学会の冷たい反応、しかしルービン博士はひたすら研究を続けました・・かつて女性だからと言うだけで大学院への入学を拒否された経験を持つルービンさん・・周囲の偏見や批判には慣れていたのです。

そして1970年代の末までに実に100を超える銀河で星の動きをつぶさに調べ上げました・・その結果、全ての銀河で星のスピードが計算から予測されていた事より早い事を証明したのです・・見えない物質が確かに存在する事を決定づける観測結果でした。

カルフォルニア大学 サンタクルーズ校 サンドラ・フェイバー教授
「ルービン博士の発見によって天文学者は初めて目に見えない物質についても重力を根拠にその存在を考えるようになりました・・その時から私達はダークマターの正体は何かそれがなぜ存在するのかを追い求めなければならなくなったのです」

星々をつなぎ止めておく重力の源は何なのか1980年以降、多くの科学者たちがダークマターの謎に挑む事になったのです。

 

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Front2 それは「暗い星」なのか?

ダークマターの正体として多くの科学者が真っ先に思いついたのが望遠鏡では見えない暗い星が大量に存在しているのではないかという事でした。

ノートルダム大学 デイビッド・ベネット博士も自ら光を出さない暗い星だと考えていた一人です・・光を出さない星と言うと多くの人は太陽系をめぐる地球や木星などの惑星を思い浮かべてその重さは自ら光を放つ恒星にすれば取るに足らないと思うかも知れません。

ところが1980年代半ばまでに宇宙には、矮星ブラックホールなどのような光を出さないのに非常に重い天体が数多くあり、それが大きな重力の源になる可能性が指摘されるようになっていたのです。

ダークマターの正体が暗い星であると示す為には、この宇宙に光星より遥かに多くの暗くて重い星があるのを証明しなければならないのです。

その為にベネット博士が使おうと考えたのが重力レンズというアイデアでした・・重力レンズは、アルバート・アインシュタインが1936年に提唱した現象です。

宇宙空間を直進する星の光は、思い星の強い重力の影響を受けその進路が曲げられるのです・・そのため光っている星を暗くて重い星が横切ると光っている星の輝きが一気に増したように見え、そしてまた元に戻る現象が起きるはずだと言うのです。

明るさを増してまた元に戻ると言う単純なアイデア・・もし重くて暗い星がダークマターの正体なら根気さえあれば証明できるはずだとベネット博士は確信しました。

ベネット博士のアイデアは瞬く間に注目を集めます・・世界6カ国、25人からなる観測チームが重くて暗い星の探索に乗り出しました。

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観測チームは可能性が高いとされた星空の一画を82の区域に分け超高感度カメラを向けました・・この中の1000万個を超える星の明るさの変化を日々観測し続けたのです。

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観測開始から3年、ベネット博士のチームはついに目標としていた現象を発見します・・急激に明るさを増しまた元に戻る星をとらえた写真が雑誌ネイチャーの表紙を飾りました。

暗くて重い星が存在する確かな証拠に世界中の研究者たちが色めき立ちました。

名古屋大学 杉山直 教授
「もの凄く興奮したのを今でも覚えています・・すごいインフォーマルなセミナーだったんですけどそこでダークマターの正体がひよっとしてわかったのかともの凄く興奮しました」

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しかし暗い星がダークマターの正体だという考えは、時を経るにつれ支持を失う事になります・・ベネット博士たちが7年間かけて発見した暗い星がわずか13個にとどまったからでした。

もし暗い星がダークマターの正体なら計算上100個以上見つからなければつじつまが合わないのです・・この7年間に及ぶ一連の観測は暗い星だけでは強い重力の源になりえない事を逆に証明してしまうと言う皮肉な結果に終わったのです。

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Front3 それは「素粒子」なのか?

ベネット博士が暗い星を探し続けていた頃、まったく違う角度からダークマターの正体に迫ろうとする研究者たちがいました。

名古屋大学 中村光廣 准教授・・中村さんが手掛かりとしたのが20世紀後半に急速な発展を遂げた素粒子物理学でした。

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ダークマターの正体は小さな素粒子だと言うのです・・2000年にわたって物質の根源を探り続けてきた科学者たち、1970年代にはあらゆる物質を形作る素粒子のリストが出来上がっていました。

電子、6つのクォークなど物質を形作る素粒子、そしてそれらを結びつける光子やグルーオンなどどいった素粒子・・このリストに登場する合計25個の素粒子によって宇宙の全ての物質が形作られていると考えられるようになっていたのです。

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素粒子のリストを完成させた一人で2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英 博士・・益川さん達がまとめた素粒子物理学の考え方は、標準理論と呼ばれます・・宇宙の物理現象の全てを標準理論によって説明可能だという空気が当時漂っていたといいます。

ノーベル物理学者 益川敏英 博士
「予見可能になってきたんですね・・計算してこの値はこうなっているはずだと実験の前に言える・・それがピシャリと合って行くわけです・・それでみなさんが標準理論と言うまでに完成をみたわけです」

中村さんはダークマターの正体も必ず標準理論が示す素粒子のリストの中にあるはずだと考えていたのです・・リストの中からダークマターの候補を絞り込むのにそれほど時間はかかりませんでした・・ニュートリノと呼ばれる3種類の素粒子です。

ニュートリノはこの宇宙に膨大な量が存在する事が知られていました・・しかもニュートリノはあらゆる物質をすり抜ける性質を持ちダークマターの候補としてふさわしいと考えられたのです。

名古屋大学 中村光廣 准教授
ニュートリノは宇宙空間にもの凄い数が存在しています・・その数は実際に存在している原子の数億倍、個数から言えばニュートリノの宇宙と考えられますがそのニュートリノに少しでも重さがあればいいのですが・・・」

ニュートリノ一つ一つの質量がある程度より重ければダークマターの問題は解決する・・中村さん達は、ニュートリノの質量を測定し始めました・・そころが日本でニュートリノについてもう一つ実験が行われていました。

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巨大観測装置スーパーカミオカンデを使った東京大学ニュートリノ研究チームです・・スーパーカミオカンデは1万個以上の光センサーを駆使しニュートリノの質量に関する精密な測定に成功したのです。

その結果が示していたのが3種類のニュートリノの内、最も重いものですら中村さんが想定していた質量の100分の1にも満たないと言うものでした・・ニュートリノダークマターの正体だと言う考えは否定されたのです。

暗い星という候補に続いてニュートリノという有力な候補も失ったダークマターの探索、・・ミラーマター、モノポール、クォクボールなど様々な説が現れては消えてゆきました・・20世紀の末、ダークマター探しは暗礁に乗り上げたのです。

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Front4 ダークマター 新たな証拠

2001年6月 NASAが打ち上げた観測衛星WMAP・・WMAPは宇宙のあらゆる方向から届く電波を調べ上げました。

そしてその電波の強さから宇宙全体の温度の分布を計算し更にそのパターンから宇宙に存在する物質の総量を割り出したのです。

その結果は驚くべきものでしたこれまで観測した銀河や星間ガスなどの物質を全てたし合わせても全体の僅か15%にすぎないとわかったのです・・実に85%の物質が未知のものだと確認されたのです。

更にダークマターの存在は星や銀河を形作りやがては生命が誕生するためにも不可欠である事が浮かび上がってきたのです。

東京大学数物連携宇宙研究機構 吉田直紀 博士は、コンピュータで宇宙が誕生して以降の様子をシュミレーションしてみました・・そしてダークマターが存在しなければたとえ宇宙が存在しても何も起こらない事がわかったと言うのです。

137億年まえに起きたビックバン、その瞬間様々な物質が誕生します・・もしダークマターが存在せず普通の物質だけだったら10億年立っても100億年経っても物質は互いの重力だけでは集まることが出来ず・・たった一つの星さえ輝き始める事は出来ません・・星が出来なければ生命誕生に欠かせない酸素や炭素といった元素も生まれません。

ダークマターが存在する場合は、宇宙誕生から間もなくダークマターの重力に手助けされ普通の物質が徐々に集まってきます・・やがてそれは大きな塊となり、宇宙誕生から3億年後、最初の星ファーストスターが誕生します。

更にダークマターの重力は銀河の誕生を後押しします・・ビッグバンから10億年後、銀河が次々と生まれてゆきます・・そしてその後、無数の銀河が宇宙の大規模構造として知られる網の目のような姿を形成して行きます。

これもダークマターの重力があって初めて作り出されたものでした・・ダークマターが無ければ現在の宇宙が出来なかった事が明らかになったのです。

実は吉田さんは、一連のシュミレーションの中でダークマターの正体につながる一つの手掛かりをつかんでいました。

ダークマターが星や銀河を作る役割をすると考えた時、その正体が水素原子の数十倍から数千倍のかなり重い素粒子であればつじつまが合うと言うのです。

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Front5 「超対称性粒子」登場

ダークマターの候補として浮かび上がってきた水素原子の数十倍から数千倍といった質量を持った重い素粒子、しかしそんな素粒子の存在はどこにも確認されていませんでした。

ところがダークマターの研究とは全くかけ離れた場所で手掛かりが見つかる事になります・・理論物理学者のピエール・ラモンさん・・ラモンさんの興味は、実験や観測にとらわれることなく論理数学を使った論理的思考だけを頼りに物理法則の全てを導く事です。

フロリダ大学 ピエール・ラモン 教授
「どんな複雑な問題に対しても必ず単純な答えがあるそれが理論物理学の最大の魅力なんです・・たとえば18世紀の科学者はどんな現象もニュートン運動方程式だけで説明できてしまうのでさぞかしつまらなかった事でしょう・・ニュートンの理論は当時完璧に見えたからです」

「私は標準理論に対して同じような考えを抱いています・・欠点がほとんど無いからです・・しかし物理学のどんな理論もまだ完ぺきではないはずです・・私達は標準理論を乗り越えてより完璧な理論を作り上げなければなりません」

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そのラモンさんが辿りついた結論の一つに標準理論には超対称性と呼ばれる重要な性質が欠けているという事がありました・・この超対称性がその後、ダークマターと意外な形で結びつく事になるのです。

ラモンさんがこの超対称性が非常に重要なものだと考える最大の理由は、長年指摘されてきた標準理論の数学的問題点を解決できると言うのです・・標準理論ではある計算を行った時、無限大という意味の無い結果が出てしまう事がありました。

ところが超対称性を組み込んだ理論ならそうした困難が消え去ってしまうと言うのです・・『標準理論』+『超対称性理論』=『無限大』が消える。

この超対称性理論を手掛かりにラモンさんは今、標準理論を超える究極の物理法則の構築に挑んでいます・・ところがこの理論には一つ困った事がありました。

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超対称性理論では、標準理論の素粒子のリストを丁度、鏡に写したような新たな素粒子の超対称性素粒子が存在しなければならないのです・・そんな素粒子は影も形も無い事が理論の壁となっていました。

ところがラモンさんが考える超対称性粒子の一部がダークマターの正体ではないかと考える研究者たちが現れ事態は一気に動き出します。

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その一人、東京大学数物連携宇宙研究機構 村山斉 機構長・・天文学者が辿りついたダークマターの存在と理論物理学者が必要だと考えた超対称性粒子の存在、もしこの2つが同じものであれば様々な難問が一気に解決できると考えたのです。

東京大学数物連携宇宙研究機構 村山斉 機構長
「もともとダークマターと言うのは天文の観測から発見されたものですがベラ・ルービン博士が銀河の中の星やガスの分量、それを説明するにはダークマターが無ければいけない・・つまり大きなものを見てダークマターが必要だと言う話ななってきた・・大きなものを見る天文学と小さなものを探究する素粒子物理学でなぜか同じ答えが出てきた・・これは凄い事です」

最新の超対称性理論によると超対称性粒子の中には、水素の数十倍から数千倍の重さを持つ粒子が存在する可能性が高いとわかってきました。

これは宇宙の進化のシュミレーションから明らかになったダークマターの重さとピタリと一致するものでした・・私達が暮らすそのすぐそばにも見える物質より遥かに大量のダークマターが満ち溢れ、それが私達をすり抜けながら存在している・・にわかには信じられないこの世界の実像が明らかになってきたのです。

 

 

 

 

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