NHK COSMIC FRONT コズミックフロント ～発見！驚異の大宇宙～
ホーキング博士の宇宙 ET・地球外生命
今回の舞台はイギリス・ケンブリッジ大学、ニュートンやダーウィンなど多くの知の巨人たちを送り出してきた場所です。
ここに現代を代表する物理学者がいます・・スティーブン・ホーキング博士、宇宙を支配する法則を解き明かす事に人生を捧げています・・相対性理論と量子力学を結びつけた量子重力論で宇宙に対する理解を飛躍的に高めました。
地球と人類の未来についても積極的な発言を続けています…
「人口の爆発的増加で資源を使い果たそうとしている・・人類が生き残る唯一のチャンスは宇宙に進出することだ」
・人類はどこに向かっているのか
・時空の本質とは何か
・万物を支配する法則はあるのか
…究極の問いに挑み続けています。
その博士が今回取り上げる難問、…ET（extraterrestrial）地球外生命体…地球とは全く違う環境で生命は誕生しうるのか？…どのような姿形をしているのか？人類を遥かに超える文明を持った知的生命体はいるのだろうか？
彼らがもし地球にやってきたら何が起こるのだろうか？…ホーキング博士が地球外生命を探すコズミックフロントに招待します。
私の名は、スティーブン・ホーキング…物理学者、天文学者、そして夢想家です。体は思うようになりませんが頭の中は自由です。
私が世界中のどこに行っても投げかけられる質問があります…ET・地球外生命はいるのか？誰にとっても関心のある事です。
この宇宙に生き物は私たちしかいないのでしょうか？…おそらく違うと思います。宇宙はとてつもなく広いからです。
地球は太陽系にある8つの惑星の一つでしかありません…そして太陽は、巨大な渦巻の中に散らばる2000億個の恒星にすぎません…その渦巻が銀河系です…銀河系はあまりにも大きくて私にとってもとらえどころがないほどです。
しかし、その銀河系でさえ宇宙の海のほんの一滴、宇宙にある1000億個以上のの銀河の一つでしかありません。…それらは巨大なクモの巣のように絡まりあいながらあらゆる方向に広がっています。
この小さな光、一つ一つが巨大な銀河です…こうして宇宙全体を見ると、生命が地球にしか存在しないとは到底考えられません。…地球外生命がいると考えるのが合理的なのです。
地球外生命と言ってもひとくくりにはできません…ドロドロした単純な生き物から、より進化した獰猛な生き物まで様々です。
どこかに知的生命体がいたとしても不思議ではありません…SF映画に出てくるような地球外文明がある事も考えられます…宇宙人が沢山登場するスターウォーズやスタートレックなどの映画は、私も大好きです。…そのような世界もあり得るのです。
しかし、創造の余地はまだまだあります…生き物とは思えないほど奇妙な生命の形があるかもしれません。
例えば燃えさかる恒星の中に生きる奇怪な生き物、…あるいは星雲と見間違うほど巨大な群れを作る微生物、…寿命が驚くほど短く、生まれてから一瞬で死んでしまう生き物もいるかもしれません。
この宇宙は広大でそこには、あらゆる可能性があります。…地球外生命はどんな姿をしていてどこを探せば見つかるのでしょうか…そのヒントは我々が暮らす星、地球にあります。
Front1
生命の法則
地球が生まれたばかりの頃、46億年前、地球にどのように生命が生まれたのでしょうか？…いくつかの仮説があります。
1．原始の海で偶然生まれた
現在、一番有力な説は、アミノ酸の分子が衝突を繰り返し、やがて完璧な組み合わせが出現します…この幸運から命の連鎖が始まったと考えられています。
2．パンスペリミア説
生命は宇宙のどこか別の場所で生まれました…そして隕石によって運ばれたのです…凍ったまま閉じ込められた生命体、岩の中なら激しい温度変化や真空の中での耐えられる可能性があります。
Front2
水を求めて
宇宙で水のある場所を探せば地球外生命がいるかもしれません水は、宇宙のどこにでもあります。…凍った状態なら小さな結晶から巨大な彗星まで宇宙に散らばっています。
液体の水を見つけようとしたらそれに適した温度の場所を見つけなければなりません…恒星の周りには、ちょうど良い温度の領域があります。
太陽系ではその領域に2つの惑星があります…地球と火星です。ロボットによる火星探査は1970年代から行われていますがまだ生命は見つかっていません…しかしNASAの探査機が白い炭酸塩を発見したのです…水のないところでは出来ません。
火星の衛星写真によって川の流れや海を思わせる地形も確認されています…しかし、現在の火星は、水のない不毛地帯、地下には水のある可能性を残しつつも、今回の地球外生命のテーマにはそぐわない場所でしょう。
太陽系でもう一つの水のある可能性のある場所は、火星から5億5000万キロ、木星の回りを回る衛星エウロパです。…エウロパは直径3000キロの小さな天体です…表面温度は－120度、厚い氷で覆われています。
しかし、その下には熱源が隠されているのです…巨大な木星の回りを楕円軌道を描いて回るエウロパ…木星から受ける引力が常に変化する為、エウロパは伸びたり縮んだりします…伸び縮みをする事で熱を生み出すのです。
つまり、エウロパ表面の厚い氷の下には膨大な水があると考えられます…そこにはET・地球外生命体が存在している可能性があるのです…太陽光の届かない暗い世界に適応した生命体でしょう。
エウロパに探査機を送り込むには、火星探査よりも多くの危険とコストを伴います…しかし、いつかエウロパの謎が明かされる時が来る事を私は期待しています。
Front3
太陽系を越えて
1995年、太陽系以外の惑星が初めて発見されました…それ以降、数100個もの惑星が確認されています。…生命の概念を変える大発見かもしれません…そお遠くない場所に地球のような惑星があるとも考えられます。…水があり、すでに生命が育まれている星です。
Front4
知的生命体
もし宇宙に知的生命体があふれているとしたら人類に興味を持ったとしても不思議はないでしょう…そんなエイリアンがすでに地球に来ていると考える人も大勢います。
私が学生だった1950年代から宇宙人による誘拐の話は良く聞きました…そんなB級映画を沢山見たものです。…エイリアンとの遭遇が本当の話なら新聞はその話で持ちきりになるでしょう。
もし政府がそれを隠しているなら見事としか言いようがありません…いまだに彼らと接触していない事は科学的には深刻な問題です。
人類は50年以上も宇宙からの電波を観測しています…その間、知的生命体からの電波を受信した事はほとんどありません。しかし、一つだけ冷害があります。
1977年8月15日、オハイオ州の電波望遠鏡が信号をキャッチしました…一度だけ受信された信号は、後にワオ信号と呼ばれ、大きな話題となります…受信したのは通常のノイズと違い、安定した電波信号でした…知的生命体が送った可能性があります。
コンピューターがその信号を6つの文字に置き換えました…それを目にした天文学者、ジェリー・アーマンは、驚きのあまりこう記します…Wow!（ワオ！）
アーマンたちは同じ方向の観測を続けましたがもはや何も受信できませんでした…ワオ信号は途絶えてしまったのです。…宇宙のどこかで知的生命体が電波を発しているかもしれない…その痕跡を探す取り組みは今も続いているのです。
地球外知的生命探査（SETI）研究所 カルフォルニア州マウンテンビューのこの研究所は、42個の大型アンテナからなる電波天文台（アレン電波望遠鏡群）を建設して宇宙で飛び交っている電波を観測しています。
人類とは別の高度な文明が存在する証拠をとらえるためです…この研究所には、地球外知的生命体探索の父と言われる天文学者がいます…SETI研究所、フランク・ドレイク博士です。
ドレイク博士は50年以上にわたって知的生命体の痕跡を探し続けてきました…ドレイク博士は30歳の時、まだ主流ではなかった電波望遠鏡を使って宇宙からの電波信号をキャッチするプロジェクトを始めました。
その後、世界最大の電波望遠鏡のあるアレシボ天文台（プエルトリコ）の所長となります…1974年、この天文台から2万5000光年離れたM13星団に向けてあるメッセージを送りました。
アレシボ・メッセージといわれるこの信号は、2重らせん構造の人類という知的生命体が太陽系の第3惑星に存在している事を示すものでした。
メッセージへの返信はまだありません…しかしドレイク博士は、宇宙のどこかに高度な文明がいると確信しています。…その文明の数を科学的に証明する為に一つの方程式を編み出しました。
SETI研究所 フランク・ドレイク博士
「銀河系にある文明の数を導き出してみましょう…この方程式を使えば人類が交信できる可能性のある恒星の数を求める事が出来ます…それがNです」
生命を育む可能性のある惑星の数、そこで実際に知性を獲得する確立などを掛け合わせ、人類が見つけ出す事の出来る地球外文明の数が導き出されます。
SETI研究所 フランク・ドレイク博士
「実際の数値を入れて計算します…結果は、2万です。…2万もの文明といえば多く聞こえるますが銀河系の全ての星の中ではたった1000万分の1です。しかそその文明がどの周波数を使っているかわからないので様々な周波数で調べる必要があるのです」
電波による知的生命体との交信は、非常に難しいものです…宇宙はあまりに広大です…送った信号が目的地に届くまでには長い時間がかかります。
例えばワオ信号は、200光年のかなたから発信されたと考えられています…地球に届くまで200年かかります。…我々が応答しても発信者に届くまで更に200年、その頃には相手は、信号の事など忘れてしまっているでしょう。
最悪の場合、その生命体が絶滅しているかもしれません…人類が生まれてから原子爆弾を作るまでそう長い時間はかかりませんでした。…彼らに同じレベルの知能が備わっていれば、その文明は長くは続かないかも知れないのです。
地球と同じように、核兵器を作りだして自滅している可能性さえあるのです…長い年月をかけて発達した文明が一夜にして消滅する事がありえるなら残念ながら彼らとの交信は絶望的です…彼らの星は、あまりにも遠すぎるのです。
しかし、もう一つの可能性があります…絶滅を免れた生命体がすでに別の星の植民地化に乗り出しているかもしれないのです。
Front5
コンタクト
知的生命体を探す方法は、2つしかありません…彼らの信号を待つか、こちらから積極的に信号を送るかです。…しかし彼らに何を伝えるべきか良く考えなければなりません。
ひょっとすると彼らは、あまり遭いたくないような危険な相手かもしれないのです。
人類は、すでに自らの進化を操る能力を手に入れています…知的生命体も同じではないでしょうか…老化を食い止め永遠の命を手にしていてもおかしくありません。
しかも人類よりも何百万年も早くその段階に達していたら…
あり得ないと思う人もいるでしょう…しかし彼らの技術は我々の文明の遥か上をいっていると考える方が理にかなっているのです。
彼らは、故郷の星の資源を使い果たし、巨大な宇宙船で暮らしているのかもしれません…そして他の惑星を征服し、植民地化しようとさ迷い歩いているのです。
だとすれば彼らが新しい惑星の資源を利用してより多くの宇宙船を建造し、更なる征服をたくらんでいる可能性もあります。
彼らを阻むものはありません…彼らの科学を持ってすれば、時空を歪めトンネルのような抜け道を作りだしているかも…そのトンネルを使って遠く離れた地点にワープしているなんてことも可能でしょう。
もし彼らが地球にやってくれば、コロンブスの新大陸発見と同じ結果を迎えるでしょう…そては、アメリカ先住民にとっては、不幸な出来事でした。
地球外生命が人類に対して友好的であることを祈りましょう。（スティーブン・ホーキング）
