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旅行会社の元社員が書く旅日記です…観光情報、現地の楽しみ方、穴場スポットなどを紹介します。

ハッブル宇宙望遠鏡 銀河密集の謎を追え

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NHKコズミックフロント
発見!驚異の大宇宙「ハッブル宇宙望遠鏡 銀河密集の謎を追え」

上記写真のように宇宙には銀河が密集し過ぎて衝突が起きているエリアがあります・・いったいなぜ銀河が密集しているところがあるのでしょうか?

アメリロスアンゼルス郊外、40年にわたり遠くの銀河を観測し銀河が密集する謎を突き止めようと
ハッブル宇宙望遠鏡史上、最大の観測時間を使って解き明かそうとする研究者が天文学者のニック・スコビルさんです。

1986年 宇宙は泡の形をしていると新聞に記事が載ります・・それまでの常識を覆す内容に天文学者の多くは衝撃を受けました・・泡の形を発見したのは天文学者のマーガレット・ゲラーさん。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センター マーガレット・ゲラー博士
「宇宙には銀河がバラバラに分布していると当時のほとんどの研究者は考えていました・・そこで私達は銀河の距離を調べ銀河を並べてみたのです・・つまり銀河の分布には決まりが無い事の証明を試みたのです」

地球を起点にゲラーさんは1000個の銀河を並べてみました・・そして銀河の分布の不思議な偏りを発見します。

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ハーバード・スミソニアン天体物理学センター マーガレット・ゲラー博士
「銀河の密集している場所とまったく空洞な場所があるのです・・これは泡のようなものだと考えたのです・・台所にあるような小さな泡ではありません泡一つを通過するのに光の速さで2億年かかるほど大きな泡です」

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宇宙には銀河がほとんど無い空間とまるで壁のように連なって銀河が密集している場所がありました・・それは巨大な泡の周りに銀河が吸いついているように見えました。

銀河は決まった形に分布している、その形は泡構造であるとゲラーさんは論じたのです・・しかしゲラーさんが観測した範囲は狭く、そこだけたまたま泡の分布をしていたのではないかと言う反論が出ました。

アメリニューメキシコ州のアパッチポイント天文台アメリカ、日本、ドイツが協力する泡構造の観測が行われました・・スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)プロジェクトです。

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プロジェクト専用に口径2.5メートルの望遠鏡が作られました・・観測目標はゲラーさんの観測範囲の100倍、見上げる夜空の半分です・・その範囲にある銀河を見つけ距離を計ろうと言うのです。

8年間かけ空の半分を観測、その数100万個・・銀河が密集しているところとほとんど無いところがあります・・どの方向を見ても宇宙の泡構造は延々と続いているのです。・・宇宙は泡で満たされていました。

スコビルさんは、SDSSプロジェクトの観測より遥かに遠くの泡構造を見たいと考えるようになりました・・ハッブル宇宙望遠鏡を使えばSDSSプロジェクトが観測した30億光年より更に遠くの100億光年かなたまで見る事が出来るのです。

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スコビルさんは遠くを見る事によって泡構造の昔の姿を見ようと言うのです・・上記写真は3億2000万光年の銀河です・・銀河から放たれた光は、3億2000万年かかって地球に届きました・・つまり見ている光は3億2000万年前からの過去の光なんです。

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遠くを見れば過去が見えてくる・・スコビルさんは泡構造の昔の姿を見る事で銀河が密集する謎や銀河がほとんど無い巨大な空間が生まれる謎に迫る事が出来るのではないかと考えました。

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しかしこの観測には、観測時間が膨大だという大きな壁がありました・・例えば満月の画像をとらえるには80枚の画像を必要とします・・宇宙の泡構造を観測するには、巨大な泡構造を一つ以上とらえなければならないのです・・その為には満月9個分の広さが必要でした。

つまり膨大な観測時間を獲得しなければならないのです・・この大規模な観測を成功させるためスコビルさんをリーダーに世界7カ国から100人を超える研究者が集まりコスモスプロジェクトが結成されました。

2002年コスモスプロジェクトは、ハッブル宇宙望遠鏡の観測を求め提案書を出しました・・しかし要求された膨大な観測時間に会議は紛糾しました。

元 宇宙望遠鏡科学研究所 所長 スティーブン・ベックウィズ博士
ハッブルが一年間に観測できるのは地球3000周分です。しかし彼らが求めてきたのは1200周分、委員会は計画の意義は認めましたがそんなに多くの時間を割り当てる事は出来ないと言いました」

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ハッブルは、出来るだけ多くの研究者に平等にチャンスを与えるという方針がありました・・しかしベックウィズ博士は落選させるには惜しい発想だと思い悩みました。

元 宇宙望遠鏡科学研究所 所長 スティーブン・ベックウィズ博士
「大規模な観測は、小さな観測を合わせたものには代えがたいものがあります・・私は多くの観測時間を必要とする大型プロジェクトの枠を新たに作りました」

こうしてコスモスプロジェクトは、ハッブル宇宙望遠鏡の大型プロジェクトとして認められたのです・・この時のメンバーの中に一人の日本人がいました。

愛媛大学 宇宙進化研究センター 谷口義明センター長
「よくぞハッブル宇宙望遠鏡はこのプログラムを採択してくれたなと思いました・・厳しいと全員が思っていたからです」

プロジェクトは、ハッブル史上最大の地球666周分、1000時間を獲得しました・・2003年、ハッブル宇宙望遠鏡が宇宙の泡構造に迫る観測が始まったのです。

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選ばれたのは、ろくぶんぎ座の一画・・満月9個分の範囲には100万個以上の銀河がとらえられていました・・画像を解析し結果を出すまで3年かかりました。

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これはコスモスプロジェクトがとらえた銀河を一定のエリアで平均化した画像です・・赤いのが銀河で明るいところほど銀河が密集しています。

カリフォルニア工科大学 ニック・スコビル教授
「泡を取り巻くように銀河があり、それが線のようにあちこちに伸びているのがわかります」

満月9個分のエリアには、しっかりと泡構造がとらえられていました・・コスモスプロジェクトの画像には様々な時代の銀河がとらえられています。

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銀河を距離ごとに分けます・・こうする事で泡構造の昔の姿を辿る事が出来ます・・宇宙では遠くを見る事は、過去を見る事なんです。

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25億年前、35億年前、60億年前と時代を遡るほど泡構造が小さくなっています・・ハッブル宇宙望遠鏡によって泡構造が過去に遡るほど小さくなって行く事がわかったのです。

ハッブル望遠鏡史上最大の観測時間を費やして撮影された100億年前から現在までの100万個の銀河・・宇宙の歴史それは銀河の泡構造の成長の歴史とも言えるものだったのです。

この100万個の銀河の中に泡構造誕生のカギが潜んでいました・・コスモスプロジェクトでは、この100万個の銀河を一つ一つ詳しく解析して行きました。

コスモスプロジェクトで画像解析を担当しているアレクシー・ベオト博士は9歳から16歳まで名古屋で育ちました。

アレクシー・ベオト博士
「プロジェクトでは100万個の銀河を観測しましたが、もし地球と銀河の間に何も無かったら光は真っすぐ地球にきます・・しかし、地球と銀河の間には、ダークマター暗黒物質)があるので光は歪められ真っすぐ届かないのです・・ダークマターはとても重い物質でこの光を曲げる作用を重力レンズと呼びます」

重力レンズを引き起こす暗黒物質は、ダークマターと呼ばれます・・ダークマターを見る事は出来ませんが星や銀河を作りだす普通の物質の5倍以上もあり、強い重力源であるとわかっています。

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地球と遠くの銀河の間にダークマターがあるとその強力な重力によって光が曲げられてしまうのです・・重力レンズにより銀河からの光がどう変化したのかを詳細に分析すれば見えないダークマターの姿を浮かび上がらせる事が出来るのです。

膨大な数の銀河から様々な重力レンズの効果を調べ上げダークマターの姿を突き止めて行きます・・解析には2年かかりました。

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そしてついに広大なエリアのダークマターの分布が明らかになったのです・・重力レンズの解析から明らかになったダークマターの姿です・・ダークマターも銀河と同じように密集しているところと何も無いところがあります・・ダークマターも泡構造だったのです。

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銀河の分布とダークマターの分布を合わせるとピタリと一致したのです・・ダークマターは銀河と同じ場所に広がっていたのです。

ダークマターが無いところには銀河もありません・・つまり泡構造を形作っていた正体は、ダークマターだったのです・・ダークマター・・その強い重力の中に星や銀河は存在していました。

愛媛大学 宇宙進化研究センター 谷口義明センター長
「実際にそれが宇宙空間に雲のように分布していてしかもダークマターの塊の中で銀河が生まれて育ってきている・・つまりダークマターに導かれて銀河が生まれて進化してきたんです」

谷口センター長は、ハッブルが見つけてきた銀河の正確な距離を日本のすばる望遠鏡を使って調べました・・100万個の銀河の距離の測定には3年がかかりました。

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そのデータをもとにダークマターの分布を立体化する事が出来ました・・これが人類が初めて目にするダークマターの立体地図です。

このダークマターの塊の中で宇宙に漂うガスや塵が集まり星や銀河が生まれていったのです・・今、宇宙探究の最前線、コズミックフロントではダークマターに迫る研究が進められているのです。

 

 

 

 

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